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天国に届け!
「私のクイール」手紙大募集! |
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優秀賞 |
わが家のクイール |
兵庫県神戸市 渡辺三千恵さん(44歳) |
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拝啓 天国のクイール様
クイール 天国ではゆっくり休んでますか。あなたのことだからまた誰かの手助けをしているのでは……。
今日はわが家のクイール犬・大(だい)の話を聞いて下さい。あなたの足もとにも及ばないけど。私の心のクイール犬です。
大は1991年10月15日生まれ。
わが家には12月15日に来ました。両手の上にチョコンと乗るそれはかわいい子犬でした。一日目はキュンキュン鳴いて落ちつかず、一週間目には一緒に眠るようになっていました。甘えたでくっつき虫。天涯孤独の私には子供同然でした。
三年後の大震災、部屋の家具は全部壊れ、私達は命からがら逃げ出しました。大は心を病み一日中鳴き続け、私の姿が見えなくなるとオーと奇声を発しました。仕事も閉店状態で出かける時は大をリュックに入れ、両手にペットボトル、配給という日々が続きました。
大の様子は少しずつ平常にもどってきましたが、ガレキのほこり、空気の悪さが原因でアトピーになり、私は入院、手術、失業とどん底でした。そして私は、大と一緒に死のうと思いました。大の首に手を回し、指が首の骨にあたり強く押しました。大は大きなキョトンとした目でじっと私を見つめ「どうしたの?」とも「いいよ一緒に死のう」ともとれる表情でした。大の体温をこの手に感じ、あの震災直後の寒い夜、大のあたたかさをたよって生きてきたことを思い出しました。今、この瞬間も私を信じてくれてる。結局死ねなかった。
何とか今まで大と一緒に生きてこれました。そんな大も今年11歳。耳も遠くなり、顔の毛も抜けて、昼、夜も逆転していつも明け方3時半に起こします。私は眠い目をこすり、フラフラになりながら散歩に行きます。明け方のきれいな空気、風の流れが大のお気に入りの時間かもしれません。
クイール、あなたは12歳と25日で旅立ったと読みました。大もあと数年でしょう。私は大のためなら何でもしてあげたい。
私が苦しい時いつも隣りにいてくれました。でも私には持病がありギリギリの生活力しかありません。だからこの手の平で抱きしめてさすって、それぐらいしかできません。
今、私が願うことは大が天寿をまっとうして、その瞬間は私の腕の中で旅立つことです。それともう一つクイール、あなたも願って下さい。
生まれてきた命が簡単にすてられないように、すべての動物が幸せになれますように。 |
■入賞作品■
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