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天国に届け!
「私のクイール」手紙大募集! |
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最優秀賞 |
天国に届けクイールへの手紙 |
東京都台東区 山越大豪(だいごう)くん(10歳) |
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クイール、ぼくが君と出あったのは、上野マツザカヤの地下二階だった。ぼくがいつものようにマンガを立ち読みしている時にはっとしたんだよ。「よし、今日は、大人がダメと言うマンガよりも、世の中の視覚しょう害者に役にたつ盲導犬を読んでみよう。」と決心した。母に言ったら、「読んでみましょ。」と言って買ってくれた。
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さっそく家の手つだいをすませたあとおばあちゃんの家へ出かけたんだ。かっているペコと、もう死んでしまったダンプの写真といっしょにベッドの中でむ中に読んだんだ。プロローグからあとがきまで。さい初のわかれの時、ぼくだったら手ばなせるだろうか、なついたジョナサンと別れられるだろうか、なやんだ。ぼくじゃとてもむりだ。愛犬を盲導犬にするなんて考えなかっただろうね。水戸さんはそれができたんだから勇気のある人だったんだね。いつの間にか泣いてしまったけど、はずかしいから笑いながらペコと顔を見合わせたよ。仁井さんの所でやんちゃぶりを発きしたクイールは、もうすぐ仁井さん夫さいからわかれる日が来るのかな。ポタッと落ちるなみだをぐっとがまんして、ペコをぐっぐっとだきかかえ読んでいた。ペコが、「クーン」と泣きだした時、本の中から「クーン」と聞こえたような気がした。ペコは、もう一回「クーン」と泣いたかと思うとスヤスヤねてしまった。ぼくは、一人で読み始めた。どうしても一度でいいからクイールに会ってみたい、できるなら生きかえらせてめいっぱい盲導犬としていろいろな体験をさせてあげたかったな……。
ぼくは、読みながら何度も何度も泣いたけど、ぼくのうでの中でペコがぐっすりねむっていたよ。ちょうど仁井さんがクイールとわかれるときだった。本からクイールの気持ちが伝わってくるような気がしてならなかった。今度は、仁井さんふさいが車に乗ってこないのが不思ぎで、こまっているクイールの様子がよくわかったよ。クイール、次にぼくがつづけて泣いてしまったのは、クイールがとうとう死んでしまったとき。クイールに一度、会ってみたいと言うぼくの願いは、ここでぷつんと切れてしまったんだ。「大へんなことになってしまったぞ。」という不安な気持ちだけが大きくなったんだ。クイールの気持ちと仁井さん夫さい、ファンタ、ちょっとはなれている多和田さん、水戸さん、スバル、北斗、パトラッシュ、アンディ、天ごくのツキスミたちは一しゅんにして、真暗な気がしたと思うよ。
ぼくは、クイールにめぐり会ってから君が地球全体の犬をやさしく天国で見守っているように考えたんだ。平和で長生きできるようにって。犬の神様みたいにね。クイール、お世話になった人、クイールの本を読んでくれた人たちめぐまれない人も世の中のみんなの事を大切に見守ってくれているんだよね。今、ぼくは、盲導犬クイールとめぐりあえて幸せでうれしい気持ちになれたよ。この手紙が天国のクイールに届くよね。山越大豪より。 |
■入賞作品■
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