ときぐすり 書影
  • 定価:本体590円+税
  • 判型:文庫判

あらすじ

朝を覚えず

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妻のお寿ずを亡くしてから一年。それなりに町名主の仕事をこなし忙しくはしているが、本来の姿には程遠い麻之助。似ているとはいえ、今日もまた家にやって来たおこ乃を「お寿ず」と呼んでしまった……。そんなある日、麻之助は清十郎から眠り薬をめぐる騒ぎの相談を受ける。太源という若い医者が処方したその薬は、飲んだ人間によって効能がおそろしく違うという。同じ薬であるはずなのに、なぜ? 理由を知りたいと考えた麻之助は、捨て身ともいえる危険な方法でその謎に迫るが――。

朝を覚えずのイラスト

たからづくし

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 町名主としての職と立場と責任のすべてを放り出し、突然姿を消した清十郎。聞けば清十郎がいなくなったのは、縁談に気を揉む親類たちが清十郎に嫁取りを強く迫った日のことだという。清十郎を探す麻之助と吉五郎だが、吉五郎は盗賊の追跡でも忙しく、清十郎を探すことに専念できない。さらにそんなとき麻之助は、両国の貞から、仲間の男たちを袖にする謎の武家娘の事情を探ってほしいと頼まれる――。(私がこんなに忙しく働くなんて、世の中、どうかしちまったのかしらん)嘆く麻之助は、清十郎が遺した書き損じから、あることをひらめく。

たからづくしのイラスト

きんこんかん

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 本日高橋家は千客万来だ。以前堀に落ちたのを麻之助が救った北国屋の娘・お千夜が挨拶に、吉五郎の姪・おこ乃が吉五郎の猫を探しに、両国の貞は三人の手下を連れて相談ごとにやってきた。貞がいうには、両国橋詰めの盛り場で最近小さな店をそれぞれ開いた三人の娘(おきん・お紺・お寛=きんこんかん)が、他の男には目もくれず、一人の同心だけに秋波を送っているという。その男とは――なんと吉五郎だという! しかし吉五郎はまったく身に覚えがない。直接店に赴いた吉五郎に対し「きんこんかん」の三人娘が示した態度のわけは――?

きんこんかんはのイラスト

すこたん

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 菓子を食べるとき大切なのは、皿か、それとも茶か? 瀬戸物問屋と茶問屋の跡取り息子同士の、なんとも下らない裁定をすることになった麻之助。調べると背後にはある茶屋娘を巡る恋の争いがあった。二人によくよく因果を含め、争いを終わらせた麻之助だが、しばらくすると二人の間にはまた争いごとが起きてしまった。今度の諍いにはいわくつきの娘「緒すな」との縁談と高額の持参金をめぐる複雑な事情が絡んでいた。今度の裁定は前回のように簡単にはいかず、さらに「緒すな」本人が麻之助の屋敷に直接やって来て――争いの結末はいかに?

すこたんのイラスト

ともすぎ

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 悪名高い高利貸し・丸三が高橋家にやって来た。聞けば最近の吉五郎の様子がどうもおかしいという。調べると吉五郎は舟に乗り、足繁く市谷御門へ通っているらしい。麻之助と清十郎、丸三も市谷御門へ赴くが、そこは武家屋敷の塀が延々と並ぶばかりの武家地。途方に暮れる三人を吉五郎に引き合わせたのは村井新左衛門という武家だった。吉五郎がここに通う理由を新左衛門から聞かされた三人は、考え違いに恐縮する。その後丸三は吉五郎のためにある賄賂事件を調べ始めるが、そのさなかに行方知れずになってしまう。丸三はどこに消えた?

ともすぎのイラスト

ときぐすり

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 高い木から降りられなくなった高橋家の飼い猫・ふに。それを助けたのは北国から江戸にやって来たばかりの十四歳の滝助だった。滝助はこれからどうやって暮らせばいいか麻之助に訊くが、これまで盗賊の手下だったという滝助が簡単に仕事につけるはずがない。そして本当に滝助は盗賊と切れているのか? とりあえず麻之助は滝助を糊売りの老婆・むめに預け、袋物師の数吉親方の世話をさせることに。ときが過ぎる中、いつしか支えあうようになるむめ婆・滝助・数吉親方。しかしある夜、盗賊の若頭が滝助のもとにやって来て――どうする滝助!

ときぐすりのイラスト

豆知識 参考文献 「絵でよむ江戸のくらし風俗大事典」(柏書房),「江戸の生業事典」(東京堂出版),「江戸語辞典」(東京堂出版),「江戸のきものと衣生活」(小学館)他