クイールをとりまく人びと
第4回 盲導犬仲間ジョナ
 パピーウォーカー、仁井さんの回にご紹介した盲導犬「ジョナ」が亡くなりました。
仁井さんご夫妻と
ネネ(元繁殖犬)とジョナ(右)

 4月22日午後5時49分享年16歳8カ月と17日。
 前の晩、牛乳に浸した食パン1枚とゆでた鶏のささみ一本をぺろりとたいらげたそうですが、22日は朝から容態が悪化し、ついにその夕方、息を引き取ったのです。老衰で、目も耳も使えず、春先からは歩くこともできない状態が続いていました。

「大往生でした」
という仁井さんご夫婦ですが、この8月、ジョナの17歳の誕生日までなんとか生きてほしい……と願っていらしたので、残念なお気持ちもあったことでしょう。

 息を引き取る前に、関西盲導犬協会訓練センターから現役時代のジョナを担当していた青木さんが駆けつけました。それまで一声も出さなかったジョナが、かすかな声でワンワンと10回くらい鳴いたのだそうです。まるで別れを告げるように。
(C)矢貫隆
宮本さんと3頭目の
パートナー、ヴィヴィ

 23日のお葬式にはジョナの使用者だった宮本武さんも富山から駆けつけました。40代で突然失明した元タクシードライバーの宮本さんにとって、ジョナは2頭目のパートナーでした。ジョナと歩くようになってから、宮本さんはマラソン、登山、百観音めぐりなど積極的に行動範囲を広げていきました。現役時代のジョナは容姿端麗で、一緒にいると「なんてきれいな犬なんでしょう」と褒められることも多く、まさに自慢のパートナーでした。お葬式に来られた宮本さんはジョナの柩に、一緒に百観音めぐりをしたときの笈摺(おいずる:巡礼が着る袖のない羽織)と数珠を入れ、別れを惜しんでいらしたそうです。

 13歳まで盲導犬として働き引退したジョナは、あるボランティアの方に引き取られていたのですが、昨年9月からパピー時代を過ごした仁井さんのお宅で暮らすことになりました。クイ―ルの住んだ静かなサンルームで最後の日々を生きたのです。

 ジョナはクイ―ルの来る一年前に仁井さんご夫婦がパピーとして預かった犬でした。98年に12歳で亡くなったクイ―ルより少しだけ年上だったジョナ。今ごろ天国でクイ―ルとふたり、再会を喜びあっているかもしれません。
 ジョナの冥福を祈るとともに、最後まで看取られた仁井勇さん、三都子さんに心より感謝をささげます。
ご紹介した方たち 第1回 生ませの親、水戸さん
第2回 パピーウォーカー、仁井さん
第3回 訓練士、多和田さん
第4回 盲導犬仲間ジョナ
第5回 使用者 渡辺さん
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