有川 浩×須藤真澄対談「おっさんLOVE」を語る
『三匹のおっさん』強力タッグ“有川 浩さん×須藤真澄さん”のお二方によるスペシャル対談。別冊文藝春秋(2009年3月号)に掲載された対談をWEB用に再構成しました。
第2回 結婚するなら……キヨ?
須藤
ちょっと思ったんですけど、三匹プラス祐希と早苗ちゃんの五人って戦隊モノにぴったり当てはまりませんか。主人公なんだけど年の功が邪魔してレッドではなくブルーのキヨに、シゲがイエローでノリがグリーン。もちろんピンクが早苗ちゃんで、レッドは祐希、と。
有川
本当だー! 考えてみたこともなかったけど、合いますね。そういえば『図書館戦争』という作品でもメインになる若いキャラクターは五人ですし、タイプを分けやすい人数なのかな。
――三匹のなかで最初に浮かんだのがキヨ(清田清一)だそうですね?
有川
まだまだ元気ないまどきのお年寄りを主人公に書こうと考えたときに、まず一人は定年退職から始めたいな、と。うちの父を見ていても思うんですけど、今って還暦、定年といってもまだまだ元気で“隠居”なんて感じは全然しないんですよね。そこで、まだ働けるのにとブツブツ言っている生真面目なサラリーマン、キヨがすんなり出てきたんです。
須藤
ブツブツから生まれた人なんだ(笑)
有川
はい(笑)。なんだなんだ年寄り扱いするんじゃねぇ、みたいなイメージ。うちの祖父が、キヨをもっともっとストイックにした感じの人だったんです。考えてみれば、かっこいいお年寄りを書こうとしたときに身近な人が自然と雛型になったところもあるのかもしれないですね。
須藤
うちはお舅さんがキヨそっくりなので、このまますくすくいくと自動的に夫もキヨになりそうです。有川さんは、旦那さんには三匹の誰タイプになってほしいですか?
有川
自分で書いておいて何なんですけど、どれもイヤだ(笑)。
須藤
えっ! そうなの~!?
有川
だって三者三様に面倒くさそうじゃないですか。私は私が楽なほうがいいな!
須藤
確かに、三匹どのタイプも嫁はんは大変かも……。
有川
強いて選ぶなら私もキヨかなと思いますけど、それでも奥さんは一枚上をいかなきゃいけないですしね。
――キヨさんは渋くていいと思うんですけど……。須藤さんのキャラ設定画では剣道着姿が凛々しくて素敵でした。
須藤
私の父方の祖父もキヨ系で、剣道をやっていたので、イメージがしやすかったのかも。祐希を描くときには「隔世遺伝~!」って感じでキヨそっくりの顔にしました。お父さん(健児)はまたちょっと違うかもしれませんよね。
有川
お父さんはね、メタボサイズでもうちょっと丸いと思います(笑)。1サイズ上がって着られなくなった“お下がり”を祐希がキヨに持ってくるくらいですから。
須藤
キヨさんと祐希の関係はいいですよね~。「レッド、そのじゃらじゃらした鎖はなんだ」とか。
有川
「うるせぇ、ブルー」みたいな(笑)。憎まれ口ききながら好き、という祐希のキャラクターは分かりやすいし書きやすいですね。私はいつも、大枠が決まると後は勝手にキャラクターが走り出すのを、自分はカメラになって追っていくような感覚で書いているんですけど、祐希も意外とよく動いてくれるキャラクターでした。
須藤
第六話のラスト! 最後の数ページなんて本持って転げ回りたくなるような爽やかさですよね!
有川
キヨは主人公なのに、一人で置いておいてもなかなか話がブレイクしないというキャラクターなので、最後は華を持たせてあげられてよかったです(笑)。
――と、キヨさんが先陣をきったところで、次に登場するのが……?
有川
生真面目なキヨの友達、と考えるともう一人は豪快な感じがいいかなって。
――次回は「酔いどれ鯨」のご主人・シゲを語ります!