MISSION#03 Sports Graphic Number」が
できるまで

Number 編集部

田村 航平

1989年生まれ。2012年に入社し「週刊文春」編集部に配属される。2014年より「Number」編集部。主に大谷翔平ら、野球取材を担当。海外ミステリが好きで、最近はアンソニー・ホロヴィッツにハマっている。ベイスターズファン。

10月上旬
企画会議

特集テーマは「箱根駅伝」に決定

ラグビーワールドカップ2019で大忙しの10月上旬、「Number」編集部で「12月12日発売号」の企画会議が行われました。「Number」は隔週発売のため、企画会議も2週間に一度のペースで開催。2カ月後に読者がどんな特集を求めているのか、先読みして企画を考えます。

約20人の編集部員が自分の企画をプレゼンした結果、12月12日発売号では「箱根駅伝特集」を組むことに決定! 自分が提案した「早稲田大学 一般入試ランナーの伝統」という企画が採用され、ページを任されることになりました。雑誌編集者にとって最も嬉しいのは、自分の企画が通ったこの瞬間です。

過去の箱根駅伝の中継映像を見ながら、早稲田大学のランナーには「一般の星」と呼ばれている選手がほかの強豪校と比べて多いように感じたことが企画を思いついたきっかけでした。スポーツ推薦で入学してくる選手もいる中、一般入試で入って活躍した彼らに話を聞くことで、スポーツにとって永遠のテーマである「努力と才能」の関係が垣間見えるのではないか、というのが狙いです。

10月中旬
打ち合わせ

ライター、カメラマン、
デザイナーと会う

企画が通ったら、原稿を書いてもらうライター、写真を撮ってもらうカメラマン、ページのレイアウトを組んでもらうデザイナーとの打ち合わせ。取材相手にどんな質問をするのか、どんな写真を撮るのか、どんなページにするのかを話し合います。

今回の企画は、一般入試で早稲田大学に入ったランナーたちが「入部してからスポーツ推薦のエリート選手たちとの差をどのように埋めていったのか」や「大学時代の経験が卒業後に生きたこと」にテーマを絞るため、練習や卒業後といった箱根駅伝の前後の話がメインとなり、あまりレースの内容の話に取材時間を割けないことを確認します。

また、取材相手は競技を引退して社会人として立派に働いている方々なので、現在のお仕事の様子が写真から伝わるような構図で撮ることをカメラマンに提案します。

10月下旬
取材

スポーツファンの「ツボ」を掴む

「箱根駅伝特集」と並行して、野球、サッカー、ラグビー、陸上、水泳など、時期に応じてさまざまな競技の取材に出かけます。試合会場に詰め掛けたファンがどんなプレーに盛り上がるのか、スポーツファンの「ツボ」を肌で感じるチャンスです。

また、試合前にはチームの広報や他社の記者とも立ち話をして、今はどの選手が人気なのか、いつなら選手がインタビューを受けられそうかといった情報を集めます。編集者にとって勝負の時間帯は、試合中よりも試合前かも……? このようにして将来的に作れそうな企画を、常にあれこれ思案しています。でも、やっぱり、スタジアムで試合を見ているときが一番楽しい!

11中旬~下旬
インタビュー

待ちに待ったインタビューがスタート!!

「箱根駅伝特集」の取材相手にアポイントを取って、待ち合わせの場所に出向きます。今回の取材相手3名はそれぞれ虎ノ門、神奈川県茅ヶ崎市、滋賀県甲賀市で働いていました。その3カ所を回るための行程を作り、ライターとカメラマンを案内します。移動の電車内では取材の予習をしたり、普段はなかなか読む時間を取れない長編小説『カッティング・エッジ』(ジェフリー・ディーヴァー)を一気読みしたり。待ち合わせ場所に着いたら、取材相手、ライター、カメラマンが困らないよう場を仕切ります。いざ、インタビューがスタート!

取材相手の皆さんは、高校時代に受験勉強と部活動を高いレベルで両立できたこと、大学の競走部に入った直後に周りのレベルの高さに圧倒されたこと、それでも人より努力して憧れの箱根駅伝を走れたことを、生き生きと話してくれました。インタビュー中は時間がオーバーしないか、話題が企画趣旨から逸れていないかに気を配り、ライターとの共同作業で取材相手から話を引き出します。アスリートの話はためになることが多く、インタビュー中は深く頷いてばかりいます。

12上旬
編集作業

雑誌のゴール、
「校了」に向けたラストスパート

でき上がった原稿と写真をデザイナーに渡し、ページのレイアウトを組んでもらいます。このとき、デザイナーにページのタイトルと完成イメージを明確に伝えることが重要です。写真選びも、デザイナーとともに行います。パッと見て読者が手を止める写真はどれか、タイトルと写真の雰囲気は合っているか、写真の並ぶ順番は原稿と合っているか、相談しながら突き詰めていきます。インタビューでは前向きな話が多かったので、なるべく明るい色合いの写真を使いたいと伝えました。

そして、原稿、写真、レイアウトは、組み合わさって「ゲラ」になります。ゲラは校閲部に回して誤字脱字をチェックしてもらい、ライター、デスク、編集長も見てページがより良くなるように意見をもらいます。そこで挙がった修正箇所に赤ペンで「赤字」を入れ、いよいよ印刷に回して「校了」となります。スタートから2カ月をかけた企画が自分の手を離れ、しばし達成感と解放感に満たされます。

1212
発売

校了から1週間後、でき上がった雑誌が書店に並んでいることを確認します。雑誌の中身はゲラで毎日のように読んでいましたが、店頭で製本されたものを手に取ると新鮮に映ります。雑誌を手に取ってくれる人の年齢層や、立ち読みしている人がどのページで手を止めているかといった、読者の様子を見ることも大事です。

さて、箱根駅伝にどっぷり浸かった2カ月を経て、すっかりお正月が待ち遠しくなりました。年明けには箱根駅伝の本番を取材して、また新たな企画を作る日々が始まります!

このように、原稿はライターが書き、写真はカメラマンが撮り、レイアウトはデザイナーが組むため「編集者はいったい何をしているの?」と思われがちです。しかし、雑誌編集者の仕事で大切なのは、ページにかかわる「取材相手」「ライター」「カメラマン」「デザイナー」の全員と綿密にコミュニケーションを取り、同じコンセプトを共有すること。自分のやりたい企画という指針で、周りの人を牽引できるところに面白さがあります。