居酒屋おくのほそ道:メニュー

太田和彦さん写真

第十回 新潟第十回 新潟

萬代橋
萬代橋
 古くは北前船の主要な寄港地であり、幕末には開港五港のひとつとなった新潟は、外国船も含む船の往来で栄え、当然、花柳界もおおいに繁盛した。古町には今も黒塀の料亭が残り、新潟古町芸者は格式がたかい。であれば居酒屋も選りどり見どりと思いたいが、多くは割烹風の構えで入りにくく、気軽に入れて新潟の酒、味を楽しめる居酒屋はとても少ないのが現状だ。
 またかつての地酒ブームの発祥である新潟は名だたる酒どころだが、多くはその「名だたる」有名地酒に安住し(それは日本中どこでも飲める)、新しい新潟の優秀な酒を置いている店は、割烹風もふくめたいへん少ない。新潟で良い居酒屋に入るのはなかなか難しいことだ。地方都市に多い地元の名物酒場も見当たらなかった。
 ということで紹介の4店、「酒亭 久本」「おふくろの味 案山子」「居酒家 こばちゃん」「JYOZO」は、たいへん苦労の厳選であります。バーは「酒亭 久本」で教わった「真樹」と、見当をつけて入った「アンドレ」がおすすめできる。「真樹」はドーム型の天井に赤御影石のカウンター。クリムトの絵が飾られ、BGMはベートーベンという銀座のバーのような店だが、ジントニックはおいしく、値段も適正だ。「アンドレ」は今年30年になる老舗で、マスターの堂に入った仕事はバーの満足感が高い。盛り合わせのお通しセットも充実でした。
 新潟は上越新幹線で東京が近くなり、そのぶん東京ずれして、本来の北陸の地方都市のよさを忘れているのではないかという印象がする。

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