居酒屋おくのほそ道:メニュー

太田和彦さん写真

第七回 弘前第七回 弘前


弘前昇天教会(左) 弘前図書館(右)
 本州最北端、東北の奥の奥、弘前は、津軽の風土的郷愁とノスタルジックなモダニズムが同居した魅力のある町。りんご畑から見える岩木山と、教会や図書館、銀行の明治の洋風建築が物語をかき立てる。
 居酒屋は、おばさん女性3人でやっている、本物の津軽郷土料理を出す「しまや」がいち押しだけれど、今回は休業中で紹介できず残念。「山水」は小ぎれいな店で、女性やお医者さんの客が多いそうだ。「和」も女性二人の店で、開けっぴろげなおかみさんの話が楽しい。かくみ小路の「つがる」は美人のおかみさんに地元のファンが多く、さらに美人の娘さんがモデルをつとめた写真の載るタウン誌をぜひ見せてもらおう。ただし隣のバー「侍庵」のマスター(渋めのいい男)がご主人です。弘前はバーの町でもあり、本文に紹介した「侍庵」「Cherry's Bar」のほか「ロブロイ」「ブロックハウス」もおすすめだ。
 町を歩いていると、どこからともなくコーヒーのよい香りがして喫茶店の多い町でもある。昭和37年から続く名曲喫茶「ひまわり」は聖愛女学校・女生徒のたまり場で、太宰治が生きていれば必ず通ったに違いない。その太宰の通った「万茶ン」は東北最古の喫茶店。文学ムードたっぷりの洋室に焼りんごがおいしく、井上ひさし、奈良岡朋子の色紙もある。
 しかし、やはり津軽三味線を聞かなければ東北最北端に来たとは言えまい。駅前のライブハウス「山唄」は最も正調な店で、働く店員が時間になると太棹を片手にステージに上がり、覚悟を定めてベンベンベンと演奏を始める瞬間はたまらない。
 喫茶店で名曲を聴き、居酒屋の素朴な肴で一杯やり、その後はバー。春の桜や、夏のねぷた、冬の吹雪を思わせる激しい津軽三味線に身を浸す弘前は、文学の生まれる町だ。(太田和彦)

●「しまや」青森県弘前市元大工町31-1 電話0172-33-5066
●「ロブロイ」青森県弘前市親方町42 電話0172-35-4293
●「ブロックハウス」青森県弘前市新鍛冶町74-2 電話0172-34-7917

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