勝間和代さんプロフィール

「私の人生がドラマティックに変わりはじめた時」

※「本の話」2009年3月号に掲載されたインタビューです。

「本の話」2009年3月号

――ストレスですね。

勝間アンチ・エイジングの専門医師である澤登雅一先生と対談した折、「人間の老化の原因は酸化であり、酸化の原因は喫煙、飲酒、睡眠不足、間違った栄養、運動不足、そして過大なストレスです」と教わりました。そういう意味では、当時、若くして老化を早めていたということでしょう。
そんな日々、さまざまな人生指南書を読んでいくうちに、だんだんと「自分」を取り戻すようになってきました。そして、33、4歳になって、「断る力」の重要性に気づいたのです。
まさしく必要なことは、「To Do List(すべきことリスト)」ではなく、「Not To Do List(断ること、してはいけないリスト)」を作ることでした。
ある意味、私は「断る力」を身に付けるまで、「コモディティ」、すなわち、他人でも十分に代替がきく汎用的な人員だったと思います。その会社のやり方を着実にこなせる、滅私奉公ができる人であれば、誰でもよかったのです。
それに気づいてから、私の世界はドラマティックに変わりはじめました。私は社内で「断る」ことを実行し、仕事を減らしていきました。

――社内での軋轢はすごかったのではないでしょうか。

勝間新しいやり方を支持してくれる人がいる一方、これまで私のことを便利使いしていた一部の上司とは、ソリが合わなくなりました。
それでも、仕事を断ることで自己投資の時間も増え、自分の生き方を見直す時間もできました。その結果として、コンサルタントから証券アナリストへ、経済評論家へという、「コモディティ」から「スペシャリティ」への道が開けたのです。
私があの時、「断る力」を身につけられなければ、いまでもコンサルタントか、プライベート・インベストメントのマネージャーを淡々とやっていることでしょう。長時間労働に悩みつつも、ある程度の高給をもらい、「高級コモディティ・パーソン」として生きていたと思います。しかし、そこに私の「幸せ」などどこにもなかったことでしょう。

――とはいえ、なんとなく「断れない空気」というのが私たちの周りに蔓延しているものですが。「お前はKYか」というような視線が突き刺さるさまが目に浮かぶようで……。

勝間「断る力」を身に付けるには何よりも「空気を読む」のが大事なんですよ。

――それは意外です。

勝間「無言の圧力」「その場の雰囲気」「相手が口には出さなくても自分に望んでいること」といったことを汲み取った上で、その相手に合わせて、いかに上手に断るかということが大事です。
「断る力」というのは、なにも上司や取引相手にむやみやたらにケンカを売ることを勧めているのではありません。
むしろ、上手に断ることで相手と「Win-Win」、双方とも得をする関係を築く力が求められるのです。



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