勝間和代さんプロフィール

「私の人生がドラマティックに変わりはじめた時」

※「本の話」2009年3月号に掲載されたインタビューです。

「本の話」2009年3月号

――勝間さんのような実力がある人でないと断れませんね。

勝間「鶏と卵の関係」といっていいと思いますが、確かに「断る力」を身に付けるためには「実力」をつける必要があります。
そういった実力をつけるには十分な研鑽と準備が必要ですから、自分の実力が出せないような、余計な仕事をしている暇はありません。
私が「コモディティ」から抜け出せる実力がついたのは、「断ること」で自分自身のために時間を使うようになってからです。相手のためにばかり時間を使うというのは、思考を放棄して相手の手足となって「動く」ことを意味します。そこでは相手にとっての「使い勝ってのよさ」が「コモディティ」としての自分の価値を測る基準になってしまいます。
そうではなく、「スペシャリティ」として生きるのであれば、やはり自分の頭で考え、自分のために時間を費やし、主体的に生きなければならないのです。
だからこそ、「断る力」を身につけることで、「断るから実力がつけられる」⇔「実力があるから断れる」という好循環を自らの手で作り出していかなければなりません。
残念ながら、こういった方法論は、学校でも企業でもなかなか教えてくれません。こういったことに気づいてしまえば、それこそ「病みつき」になって後戻りができなくなるくらい快適な世界になるのですが(笑)、そういった世界があることすら、気づくことはなかなかできません。

――20代の勝間さんも、そういった「病みつき」になりそうな世界を知らなかったわけですね。

勝間ただ今にして思えば、その当時、活躍していた女性の先輩コンサルタントの方々から、「断る力」の重要性について、口をすっぱくして言われてきました。
当時、「優等生」だった私にはなかなかピンと来ませんでしたが、先ほど述べた経緯を経て、やっと30代で「断る力」を実行に移すことができました。
ですから、そういった「世界」の一端を先輩から示されながら実行までには約5年のタイムラグがありましたが、それでもそういった「世界」が存在することを若いうちから認識していたのは幸いなことでした。

――『断る力』には、断れないことによって悩みのタネとなる例が挙げられています。
「上司や取引先が思いつきでモノを言って、思いつきで仕事を命じてくるので、本当に大事な仕事を後回しにして、残業してまでそれに対応してしまう」
「さまざまなビジネス本やセミナーでせっかく仕事の能率をアップさせたのに、職場の上司や同僚の目が気になり、仕事を断れないし、だらだらと職場に残らざるを得ない」
「送別会や新年会ならまだしも、常日ごろのいきたくもない食事やお酒、カラオケなどへの、友人や職場からの誘いを断れずに、困っていながらもついつい出てしまう」
本当によくあることで、困ってしまいますよね(笑)。

勝間私もかつてはそうだったから、よくわかります(笑)。
日本はだいぶグローバリゼーションが進んだといわれていますが、まだまだこういった「非生産的」なつきあいがだいぶ残っています。日本のような閉鎖的な社会で重視されやすい、こうした「同調傾向」に起因するストレスを減らし、生産性を向上し、「スペシャリティ」へと成長するために、「断る力」が重要なのです。
ただ、「断る力」はたいへん強力な武器なので、使い方ひとつでは思いもかけないリスクを負うハメになります。むやみやたらに断るのではなく、どういうところでは断り、逆にどういう場面では歯を食いしばってでもベストを尽くすべきなのか、そういったスキルをつけたい方はぜひ、『断る力』をお読みください。



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