8月28日、都内にて第163回芥川賞・直木賞の贈呈式がおこなわれました。直木賞受賞者の馳星周さんの「受賞のことば」を掲載いたします(馳さんは北海道・浦河町よりリモートで出席)。

馳星周さん
馳星周さん

 どうも、馳星周です。

 まずは、今日は私は北海道の浦河町というところにおりまして、この浦河というのはサラブレッドの生産が一番の産業なんですけれども、万一僕が東京へ行ってウイルスを持って帰ってくるようなことになると、馬という生き物の世話をするシステムに重大な被害を与える可能性があるということで、今回はこういうリモートでの出席ということにさせていただきました。何卒ご理解のほどをお願いいたします。

 受賞の時の記者会見でも言ったんですけれども、賞が欲しくて小説を書いているわけではありません。が、今回はいただいて大変ありがたく思っています。妻と前に話したんですけれども、30代とか40代じゃなく50代の中頃で直木賞というのをいただけたのはよかったねと。若い時にもしいただいていたら、もっと傲慢な人間になっていたかもしれません。

 今、僕は55歳ですけれども、55という年齢で受賞の知らせを聞いた時に、編集者だったり、出版社の営業の方、あるいは読者の方が居て、自分はずっとこの二十数年間小説を書き続けることができたのだと。その結果の直木賞だと思って、大変ありがたいことだなと。

 また、この間発売された『オール讀物』で、選考委員の先生たちの選評だったり、仲間の作家たちのエッセイだったりを読ませてもらって、「ああ、自分はこんなにもみんなに気にかけてもらっているんだ」ということで、本当にありがたいと思いました。

 また、新型コロナ禍の真っ最中であったりだとか、北海道の浦河の片田舎で受賞の知らせを聞くなどなど、俺らしくていいんじゃないかなというふうに思っていたりもします。

 とにかく、今回の受賞はうれしく、ありがたく思っています。ありがとうございました。

直木賞の詳細に戻る