INTERVIEW#05
プロモーション部市川 奏
プロモーションに正解はない

私の入社理由

物語を作る現場にいたい

物語を作る現場にいたい。テレビ業界や新聞社も考えましたが、小説の持つ無限の可能性に惹かれ、出版社を志すようになりました。

東野圭吾さんの『容疑者Xの献身』では、原作も映画も二度泣き、今なお私の中で不動の一位に輝いています。自分自身が映画から原作を好きになったように、映像化を通して多くの人に原作を読んでほしいと考えるようになりました。大学で著作権を学んできたこともあり、映像メディア部で原作の良さを引き出せるような映像化に尽力したい、という思いで文藝春秋の門を叩きました。

文藝春秋は、文藝(芥川賞・直木賞)と春秋(ジャーナリズム)の二つの柱を持つ会社であること、また部署異動が頻繁にあることにも惹かれました。そして何より、体当たりで臨んだ面接で自分を肯定してもらえたことから、この会社に入ろうと決めました。

今の仕事について

現在までの経歴

  1. 2021.03月 入社
  2. 2021.04月 メディア事業一部
  3. 2023.07月 プロモーション部

今の仕事について

書籍を中心に、文藝春秋が手掛けるコンテンツのPRを担当しています。1冊でも多くの本を売るためなら、どんなことでもOK! 新聞やテレビなどメディア関係者への売り込み、サイン会はじめイベントの開催、著名人や企業とのコラボ、書店のPOP作り、新聞・SNS広告での発信など、それぞれの銘柄に合った施策を検討・実施しています。

現在の仕事のやりがい

本を読まない人が増えている世の中で、いかに読者との接点を増やすかを意識しています。

住野よるさんの『恋とそれとあと全部』は、若い読者にターゲットを絞り、「ずっと夜中でいいのに。」のMVなどを手掛けるクリエイターにPV作成を依頼、TikTokとX(旧Twitter)では合計640万回再生、ABEMAの広告出稿にも挑戦しました。

芥川賞を受賞した『ハンチバック』は、実は賞を獲る前から仕掛けを開始。NHKの「おはよう日本」「首都圏ネットワーク」で取り上げてもらったことは、累計6刷23万部(2023年9月現在)へと押し上げた一端を担いました。

私が担当している直木賞受賞作『極楽征夷大将軍』は、書店員さんの「もっと分かりやすい紹介漫画があると買いたくなるのに」という声から、コミック編集部・歴代の担当編集・営業部と綿密に打ち合わせを重ね、突貫1か月で紹介漫画を作りました。漫画は書店POP、SNS広告など販促に活躍しています。

プロモーション部は世の中の動向を探りながら、コンテンツの話題化を画策し、1冊でも多くの本を売ることを目標としています。社内の編集力・営業力・企画力をふんだんに生かして、コンテンツ作りのプロフェッショナルと読者の架け橋になればと精進する日々です。

これからの目標や夢

2023年に設立100周年を迎えた文藝春秋には、素晴らしいコンテンツがまだまだ眠っています。物語には時を経て、二次利用、三次利用されても褪せない魅力があると私は思っています。大学時代に著作権を勉強してきたことから、映像メディア部やライツビジネス部にて、もっと多くの原作が、読みたい人に届くように尽力していきたいと考えています。

日本では1年間に約7万冊もの新刊が発売されています(2019年の総務省統計局データより)。星の数ほどある本の中から、読みたい本を見つけることはそう簡単ではありません。私は、今の自分にぴったりな本と出会える間口を広げる役割を担っていきたいと考えています。映画やテレビだけでなく、Netflix始め配信サービスでは全世界に作品を届けることができます。また小説に限らずノンフィクションも、ドキュメンタリーやコミックという形で世に問うことが可能だと思っています。

入社前と入社後で
ギャップを感じましたか?

もともと文藝春秋という会社には「古い」「堅い」「真面目」というイメージを持っていました。ですが、実際に働いてみると、どんな提案をしても「面白そう!」「やってみようか」と受け入れてくれる文化がありました。

文藝春秋」の広告を担当していた2022年12月、雑誌の100周年記念号が発売されました。令和の時代にも関わらず、684ページ、厚さ3センチの雑誌作りのため、朝から晩まで東奔西走する編集部員や営業部員、印刷会社や書店の方々の様子をもっと多くの人に知ってもらいたい!という思いで、密着ドキュメンタリー映像を作成しました。前例のない試みにも、賛同し協力してくださった方々には感謝の気持ちしかありません。

また創業者・菊池寛の雑誌作りの原点には、「飽くことなき人間への興味」があるとされています。その精神は今でも変わらず、噂好きの社員が多いです。雑誌の新刊は全社員に配られるのですが、「文藝春秋」が届くとまず「社中日記」を読むのは今も昔も変わらないと思います(笑)。

文藝春秋の社風とは

入社して2年間在籍していたメディア事業局では、月に1度「新規事業会議」として“文春のコンテンツ・ブランドを活かして何か新しい試みができないか”を話し合う機会がありました。最近飲みに行った友達との会話、会社訪問して知った同業他社の成功事例など、トークテーマは自由。オープンに開かれているので、異動後も定期的に情報交換できる間柄です。麹町にある9フロアの1つのビルに全社員いるからこそ、なし得る関係性があると感じています。

また、肩肘張らず自分らしさを存分に発揮できる会社でもあると感じています。350人ほどしか社員がいないので、先輩社員との距離が近いことに驚きました。基本的に肩書で呼ばず〇〇さんと“さん付け”で呼ぶため、新人だろうと一社員として対等に意見を言い合うことができます。落ち込んでいると部長がケーキを差し入れてくださったことや、社内で開催した卓球大会に社長が飛び入り参加してくださったことも記憶に新しいです。

1週間の仕事の時間配分

オフの1日

劇場で映画を観ることが好きなので、仕事終わりや週末に新作を観に足を運びます。同僚と映画の感想を語り合うのが、月曜日の楽しみになっています。

文藝春秋を一言で
表現するなら

知的動物園

忘れられない一冊

石井妙子『女帝 小池百合子』

高校3年生の夏、都知事選の直前に行われた高校生討論会という場で、小池百合子氏に会う機会がありました。私のジャーナリズム精神が芽生えるきっかけになった出来事ですが、そんな小池氏についての本が就活時に出版され、時の運を感じました。社内で著者の石井妙子さんに遭遇した時のドキドキは忘れられません。いつかこうしたノンフィクションの映像化に携わることができたらと胸のうちに秘めています。

入社を考える方へのメッセージ

プロモーション部と
“私の好奇心”。

プロモーションには正解の形がありません。40年以上前に発売された有吉佐和子さんの『青い壺』が話題化し重版がかかったり、発売直後には反応がなくともじわじわとロングセラーになったり、予期せぬところからヒット作が生まれることも度々起きます。「書籍だから」「雑誌だから」という枠にとらわれず、文藝春秋がなし得る新しいことに挑戦してみたいです。

エンタメ業界だからできること、映像ではなく活字だからできること、老舗の文藝春秋だからできること、プロモーション部だからできること、可能性は無限大に広がっています。一緒に「面白いこと」探しに行きませんか。