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著者インタビュー 10年ぶりのしんさく「運命の人」を語る

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――十年ぶりの新作を完結した気持ちは。

「読者の皆さんを本当にお待たせしてしまいました。 これが最後の作品だという気持ちをこめて書き上げましたから、今は一種の虚脱状態ですね。長編執筆中はエッセイやインタビュー、講演などの依頼をすべて断わって小説に集中しているため、ほとんど表舞台にたつことはありませんでした。そのせいか、重病なんじゃないかといわれていると聞いて、びっくりしたこともありましたよ(笑)」

――近年、大学病院を舞台にした『白い巨塔』や、旧家の遺産相続争いを描いた『女系家族』、キムタク主演で話題になった『華麗なる一族』など、作品がドラマ化ラッシュで、いずれも高視聴率を記録しています。今年も新たにドラマ『不毛地帯』、映画『沈まぬ太陽』の製作が進行中ですが、いくつもの山崎作品が、刊行後何十年も読み継がれ、映像化され続ける秘密はどこにあるのでしょうか。

「特別な秘訣なんてありません(笑)。私はいつも、ただよい小説を書こうとしているだけです。ただ、そのための時間と労は惜しみません。私は文字通り四六時中、小説のことだけを考えています。 大きな構想のもとに、出来る限りの取材をし、事実を掘り下げる。しかし、取材で得た事実を羅列しただけでは小説にはなりません。テーマをどう構成し、人間ドラマを形作って行くか、考えに考え抜き、ディテールにもこだわります。そうしてこそ作品に厚みが出て、真実というものが表現できるのではないでしょうか」

――当時の新聞社内の締め切り間近の騒然とした雰囲気や、記者の生態も臨場感を持って描写されています。

「若い読者の方はご存じないかもしれませんが、私は戦争中に毎日新聞大阪本社に入社し、十年ほど学芸部の記者をしていたのです。在職中に小説を書き始め、直木賞を受賞してから作家として一本立ちしたわけですが、今回の『運命の人』には当時見聞きしたことが確かに生きていますね。新聞記者の傲慢さ、社内の散らかりようなどは、なかなかリアルに書けたのではないでしょうか(笑)。 主人公は記者としての使命を人一倍強く感じています。だから時の政権が画策している国民に対する欺瞞が許せない。その使命感が、思いがけない事件を引き起こし、彼と権力を全面対決させることになる。そして彼自身にも、家族にも悲劇を呼んでしまうのです」

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