清涼院流水
対談:清涼院流水×水野俊哉
戦国武将が馬を乗りつぶしたみたいにね(笑)。
そのくらい、集中して書き続けていたのは事実です。何が起こってもおかしくない、信じていたものが一瞬で覆ることだってある。『コズミック・ゼロ』で描かれる世界はもちろんフィクションですが、私たちが一瞬先に何が起こるかわからない世界に生きていることはまぎれもない事実ですから。
僕の実家が阪神大震災で全壊した時、人生観や常識、創作スタイルなど、それまでの僕のすべてが一瞬で変わってしまいました。僕は昔からミステリーファンですが、あの震災を体験して以来、ミステリーで現実を超える作品はないと思うようになってしまった。まさに「事実は小説より奇なり」なんです。そういう体験を経て書き出したのが『コズミック』から始まる一連の作品なんですが、十二年以上たって、またあの時と同じような感覚を抱いているんです。『コズミック・ゼロ』で何が起きてもおかしくない世界を書いている真っ最中に、百年に一度と言われる世界金融危機が起こったりしたわけですから。
投資のスペシャリストである内藤 忍さんも、そのあたりのテーマで興味を示してくださいましたよね。
内藤さんは投資ユーザーに対する金融教育などをするマネックス・ユニバーシティという会社の社長さんで、彼に『コズミック・ゼロ』を紹介して、これを国家や経済の崩壊のシミュレーションとして読んでみると面白いのではないかとお話したら大変興味を持たれて、すぐに流水さんとの交流も実現しました。
私自身も日本経済が究極に悪化したら何が起こるのかとか、国家がデフォルトしたらどうなるかということを『コズミック・ゼロ』を読みながら少し考えてしまいました。