対談:清涼院流水×水野俊哉

水野
今年最低八冊、最大で十二冊という無謀な計画がなぜ可能と思えたかというと、流水さんが一年間仮眠のみで12カ月連続刊行をやり遂げたことを知っているし、私自身、本を書くこと以外で精神的に大変なことがいろいろあった時期を乗り越えましたからね。ビジネス書の世界でいう相互アファメーション、予言の自己成就みたいなところがあって、「なんだ、寝なきゃいいんだ」みたいな気がしているんです(笑)。
清涼院
アファメーションというのもビジネス書っぽい用語ですが、要は自己肯定ですよね。朝、鏡を見て「僕はできる」と自分に言い聞かせる。でも、自分だけでやり続けるには限界があるんですね。ところが、僕らは毎日メールをやり取りすることでお互いにアファメーションし合っているから、これは最強です。
水野
ダイエットしたい人同士が、今日は何を食べた、何を我慢したと報告し合うようなものですね。
清涼院
僕たちは超人じゃないので、メンタル的な浮き沈みは当然ある。僕がローのときもあれば、水野さんがローのときもあるけれど、そういう時にメールで相手から励ましの言葉をもらうと絶大なパワーになるんです。二人とも基本的には並外れたプラス志向ですから。
水野
このやり取りは大きいですね。
清涼院
水野さん主催のビジネスセミナーやイベント、パーティーなどにも呼んでいただいてビジネス系の編集者や著者と知り合う機会が増えました。刺激的で面白いです。
水野
従来のミステリーファンや流水ファンだけじゃなく、ビジネスマンにも『コズミック・ゼロ』はぜひ読んでほしいですね。
清涼院
ビジネス書の書き手として、『コズミック・ゼロ』をお読みになっていかがでしたか?
水野
最近流行りのフォトリ(ーディング)や速読で言われるように、ビジネス書の場合、どこから読んでもいいんですが、『コズミック・ゼロ』だけは絶対に後ろから読んじゃだめです(笑)。速い展開でどんどん読み進んでいって、最後の最後に何が待っているのかという楽しみは、ビジネス書では決して味わえない小説の醍醐味ですからね。
清涼院
確かにビジネス書の鉄則に「最初から読むな」「好きなところから読め」というのがありますが、『コズミック・ゼロ』でそれをされては困ります(笑)。
水野
「驚天動地」という言葉はこの作品のためにあるんだと思いました。一日で何百万人が消えてしまう、とてつもないことが猛スピードで起こる、そういう話をなぜ書くのかというと、この世の中、いつ何が起こるかわからないという無常観を流水さんが感じているからだと思います。私のように、いきなり三億円の借金を抱えることもあるわけだし(笑)。
清涼院

理不尽で欺瞞に満ちた世界に対する憤りや疑問、なんとかしたいという強い気持ちが、僕たち二人の根底に共通してあるんですね。その使命感がいい意味で僕の創作衝動を高めてくれたと思うし、水野さんにしても、千冊もの本を読んだり、人間離れした量産体制を取れるのは、やはり根底にどうしようもない衝動があるからだと思うんです。
 不思議なシンクロニシティがあって、『コズミック・ゼロ』と水野さんの新刊『法則のトリセツ』(徳間書店)は、実は、同じ日に脱稿しているんです。相互アファメーションが奇跡を生み出した。