南條範夫、藤沢周平、佐々木譲、逢坂剛、宮部みゆき、宇江佐真理、乙川優三郎、山本一力、石田衣良、桜木紫乃、志川節子、門井慶喜、奥山景布子、坂井希久子、柚木麻子、佐藤巖太郎、木下昌輝……歴代オール讀物新人賞受賞者に続く、歴史時代小説分野の新たなプロフェッショナルな書き手の発掘を全力で目指します。
安部龍太郎
門井慶喜
畠中恵
小林尋
栄えある賞を賜り、誠にありがとうございます。お忙しいなか選考にお時間を割いて下さった選考委員の諸先生方、編集部の方々に、この場を借りて心から感謝申し上げます。
書くのが楽しい。時間を忘れる。
数年前、妻から万年筆をプレゼントされた。そのうちにコロナ禍が始まり、在宅勤務が導入されて時間に余裕ができた。三十年ぶりに、物語を書こうと思った。
そこで思い出したのは、学生時代に十枚で断念した室町期の話だった。そのときに書けなかったのは、力不足を痛感したから。技術を磨き経験を積まなければ、人を楽しませる小説は書けないと思ったからだった。でも、今なら書けそうな気がした。資料を読み、そこに書かれていない背景とディテールに、思い切り想像を膨らませた。そして、書いた。
書きたい題材はまだある。ずっとやりたかったことができる。これからはその歓びを噛みしめながら、楽しく粘り強く、「物語を書くこと」に取り組んでいきたい。