居酒屋おくのほそ道:メニュー

太田和彦さん写真

第三回 会津第三回 会津


鶴ヶ城
山ふかい会津は、昔は新鮮な魚貝は手に入らず、保存のきく乾物を巧みに使い名料理を生み出した。身欠きニシンと山椒の「ニシン山椒漬」は東京の居酒屋にも時々あるが、地元製とは天地の差がある。乾燥帆立貝柱を出汁に里芋、人参など根菜やキクラゲを煮た「こづゆ」はいつの間にか何杯もお代わりしている名品。郷土料理といえども家庭料理の域を超えた洗練は、会津の士魂をしのばせると感じるのはうがち過ぎか。会津若松隣の会津坂下の馬刺は間違いなく日本一で、特に赤身は絶品。居酒屋ではこの3品は必ず注文すべし。
福島県は近年、日本酒名品を連発して酒好きの注目の的。今や有名な「飛露喜」をはじめ「会津娘」「天明」「奈良萬」など、昔の「重く辛い」会津酒から脱してきれいな旨みを持つが、その中にどこか一本筋が通った印象があるのも、やはり士魂ゆえか。
会津はここ1年、新しいよい居酒屋が続々誕生し、今や居酒屋の町になりつつある。駅にある立派なパンフレット「会津de居酒屋」は非常に充実した編集で、まずこれを手に入れて居酒屋行脚を開始せよ。さらに会津は蕎麦どころ、隣の喜多方はご存知「喜多方ラーメン」(うまいです)と聞けば、地方の居酒屋旅にこれほど格好な町はないと知るだろう。(太田和彦)

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