48人の主人公が織りなす春・夏・秋・冬の48の物語。
「ひとの“想い”を信じていなければ、小説は書けない気がする」という著者が描きだした、
普通の人々の小さくて大きな世界がここにあります。
バスケ部キャプテンの女子高生。厳しいメニューを組んで、部で孤立してしまう。長じて第三営業部のゼネラルマネージャー。創業以来初めての女性部長で社内の風当たりも強い。
親にも大家にも内緒で、2歳年上の彼女と同棲する19歳の大学生。洗濯機もないアパートに手回しのコーヒーミルを導入した彼女の好みはマンデリンだった。
桜並木の公園にもなっている川沿いの遊歩道で、疲れ切ってベンチに座り込んでいる30すぎの男。ちょっと腰を下ろしたつもりが立ち上がれなくなってしまった。
双子を出産する母親が実家に帰省したため、毎週父親につれられて名古屋へかよう5歳の少女。名古屋までの行きの新幹線は機嫌がいいけれど、帰りはいつでもぐずってしまう。
年老いた父親が死んで、四十九日の法要が終ったあとから母親がめっきり老け込んだ。年末にはどっさり届いたはずの漬け物も今年は来ない。送ってきたお餅はいつもと違っていた――久しぶりに母親に会いに行った中年の男。
子どもたちが大きくなって、元日を家族揃っては一日過ごせなくなった。恒例行事にこだわりたい、高校2年生の長女と中学2年生の長男をもつ40代の父親。
中学時代の友だち、そして40代半ばの地元工務店の社長とその同級生と四人で、下町の町内会の「火の用心」の夜回り当番をつとめる女子高生。
小学校にあがってから既に転校を三回している小学4年生。迎えた二度目の冬で『かまくら』を友だちの三上くんと一緒につくるのを楽しみにしていた。
4歳になるひとり娘と暮らす離婚したての女性。
97歳のひいおじいちゃんを亡くしたばかりの15歳の高校生。
中学受験に失敗した12歳の女の子。
同じ団地のお隣にすむ幼なじみの“じゅんちゃん”は幼稚園の人気者だった。けれど小学校にあがるころ、だんだん様子が変わってきて――大好きな友だちだった少年の記憶をたどる40代後半の男。
息子のバレンタインデーをはらはらしながら見守る父親。モテない男子高校生の一年でもっとも厳しい一日について、家族に熱く語る。
春合宿を野宿にしないために映画サークルの先輩とふたりでバンザイ隊を結成し、合格発表を見にきた受験生をカモに小金を巻き上げる大学2年生。一年前は同じ先輩からバンザイ攻撃をうけたものの、手元不如意で払えなかった。