東野圭吾プロフィール

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「ガリレオ創作秘話──閃きはすべてものにする」

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――『聖女の救済』に関しては苦労しなかったとおっしゃっていました。続けて、短編集『ガリレオの苦悩』を執筆されました。こちらはいかがでしたか?

東野

無茶苦茶、苦労しましたね。

――苦労の過程、アイデアが閃いてから、それを小説として完成させるまでの流れをお聞きしたいと思います。

東野

まずですね、閃きはほとんどない。『ガリレオの苦悩』に入っている「指標(しめ)す」という短編。実をいうと、今回の短編五本のなかで、これが一番しんどかった。 確か、去年の夏ぐらいにダウジングを題材として使おうと思っている、という話をしたと思います。

――うかがいました。ロッドと呼ばれる棒や振り子を利用して、地下の水脈や探し物を当てる方法だと。

東野

ダウジングを使おうという発想、そのことが閃きだといえば閃きだけど、こんなもの閃きとはとても言えないわけです。
どうやって使うかと思ってから、結局一年間ろくなアイデアが出なかったわけだから。 短編四本でも一冊の本になるし、もう諦めようかとも思った。 だけど、どうしても五本にしたかったんですよね。 どうしてかというと、これまで『探偵ガリレオ』と『予知夢』には短編が五本ずつ入ってる。 そうするとこの時期に出して四本だったら、なんか四本しかないけど、いかにも今がチャンスだから出しましたという感じがするじゃないですか。

――その通りですね。

東野

それが悔しくて、なんとか五本にしたかった。あの忙しい東野圭吾が、単行本に書き下ろしを入れていると編集者たちも驚く。
読者にも、書き下ろしが一本収録されているというサプライズになるしね。 で、何とかダウジングをものにしたいと悩み続けて、過敏性大腸炎になって、体調を崩したわけです。 あなた方は「お腹こわしてるんですか?  飲みすぎたんでしょう」なんて、笑ってましたが。

――いえいえ、スランプだとおっしゃるから、いまさら何がスランプですか、と。

東野

ダウジングをものにするぞと決めてから、ダウジングの本を読み込んで、ダウジングロッドまで買い込んだ。何とかしてトリックでダウジングロッドが動いた、探し物を指標したってことにできないかな、と思いながらロッドを触って考えた。 ところが、科学的、物理的に考えれば考えるほど無理だった(笑)。

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