あらすじ

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定価
:550円+税
判型
:文庫判

予知夢

「第一章 夢想る」

十六歳の森崎礼美の寝室に忍び込んだ坂木信彦は、礼美の母親に見咎められて逃走し、轢き逃げ事故を起こした。奇妙なことに坂木信彦は、十七年前から自分はいつかモリサキレミという名前の女性と結ばれるのだという夢想を口にしていたという。坂木の弁護士が精神異常を申し立てる可能性があるため、草薙刑事は湯川 学に出馬を要請した。坂木が予知夢を見たというのは本当なのか。だが湯川の推理は、予想外の方向へ進んでいってしまう。

「第二章 霊視る」

長井清美が小杉浩一によって殺害されたほぼ同時刻、現場から離れた場所で彼女の姿を目撃した者がいた。いわゆる霊視の可能性はないかと、草薙刑事から相談を持ちかけられた湯川は、単なる錯覚だと笑い飛ばした。だが草薙の漏らした一言が湯川の顔色を変え、現場へと誘うことになる。湯川によれば、この一件は小杉が自供した通りの単純な衝動殺人ではなく、さらに裏があるというのだ。長井清美のライフスタイルに隠された秘密とは?

「第三章 騒霊ぐ」

草薙刑事は、姉の友人の神崎弥生から相談を持ちかけられた。彼女の夫が五日前から行方不明になっていたのだ。その足取りは、高野ヒデという老婦人の家で途絶えていた。草薙が高野家を訪ねると、そこにはヒデの親類と称する男女がいた。数日前に老婦人は亡くなったのだという。彼らの挙動に不審な点を感じた草薙は高野家を張り込む。やがて、家全体を揺るがす、強烈な振動が……。ポルターガイスト騒動の謎を解き明かす湯川 学の活躍。

「第四章 絞殺る」

町工場を経営する矢島忠昭は、旧い借金を返してくれる人が現れたと言い残して外出し、そのまま帰らなかった。忠昭の娘・秋穂は、前夜火の玉を見たと語り、不安に震える。翌日、忠昭はホテルの一室で絞死体として発見された。奇妙なことに、現場の床にはそれまで無かった焼け焦げの痕があったのだ。草薙をはじめとした捜査陣は忠昭の妻・貴子のアリバイが不完全であることに着目する。だが湯川のみは、事件の違った側面を見ていた。

「第五章 予知る」

菅原直樹は眼前の光景に凍りついた。愛人の瀬戸富由子が、向かいのマンションの部屋で、彼に見せつけるように首を吊って死んだのだ。警察が現場検証のためにやってきたが、事件当時の直樹には完璧なアリバイがあり、状況はすべて自殺の方向を示していた。ただ一点、菅原家の隣室に住む少女が事件の三日前に、富由子の部屋で女性が首を吊っている姿を見たと証言していることを除いては。草薙刑事の要請で、再び予知の謎に挑む湯川 学。

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