1945年8月15日、正午前。東京・芝の軍需工場で女性の腐乱死体が発見された。
1年後に発見される第二、第三の女性の死体。誰が何のために?
終戦を機に解き放たれた殺人鬼とそれを追う警察の内部に隠された巨大な秘密。
トントン、トントン、トントン――槌音の響く東京のゼロ年に、
すべての価値の逆転を生き抜く男と過去に滅ぼされる男。
イギリスの気鋭の作家デイヴィッド・ピースが放つミステリの最高峰、
東京三部作の第一作『TOKYO YEAR ZERO』が開幕する。
日本の翻訳出版界では、外国で刊行された作品を「輸入」するケースがほとんどだ。
だが東京三部作は、文藝春秋が著者のデイヴィッド・ピースとともに
構想段階からかかわり、英米をはじめとする諸外国へと発信する作品である。
占領期日本で起きた三つの事件「小平事件」「帝銀事件」「下山事件」をモチーフに、
「占領」とは何かを描く《東京三部作》の第一作が『TOKYO YEAR ZERO』。
圧倒的な暴力にさらされたとき、人間は、そして民族はどう変わっていくのか。
ここで発せられた問いは、とりわけ2003年のイラク戦争以来、
「占領」に深くコミットしている英米の出版界を強くひきつけた。
アメリカでは大手出版社クノッフ社が、イギリスではフェイバー社が、
原稿完成前に『TOKYO YEAR ZERO』刊行を決めた。
フランス、ドイツ、イタリア、スペインなど、世界十数カ国での出版が決まっている。
日本発の問題作――それが『TOKYO YEAR ZERO』である。