対談:清涼院流水×水野俊哉

 

[ 第2回 ] 新刊続々、流水祭り開催中!

水野
最近は流水さんに会うのが目的でビジネス書系のイベントに参加している人も多いと思います(笑)。
清涼院

コズミック・ゼロ』と並行して書いた『B/W(ブラック・オア・ホワイト)』という作品が、太田出版からほぼ同時期に出版されます。『コズミック・ゼロ』は僕の小説家としての十二年間のテクニックをすべて注ぎ込んだ究極の作品なんですが、あまりにも総決算すぎて、これを出したら僕はそこで終わってしまうんじゃないかという危険性を感じたんですね。それでこの究極とバランスを取り、それを補完するような作品が必要だと思って書いたのが『B/W』です。『コズミック・ゼロ』で描いたマクロのスケールの事件とバランスを取るために、『B/W』ではミクロの事件を描きました。この二作を並行できたことは本当によかったと思っています。
 もう一つ、映画会社のスターダスト・ピクチャーズと組んでやっていた『忘レ愛』という携帯小説も六月末に本になるんですが、これも『コズミック・ゼロ』と深い関わりを持つ作品です。『コズミック・ゼロ』の構想をお話ししていたとき、編集のIさんが、ぜひ映画化したいと言ってくださったので、僕も最初から徹底的に映画化にこだわろうと思って書き始めたんです。そんな流れの中で映画会社と組んで仕事をしていたので、僕の中で映画化ということが非常にリアルに感じられたし、実際に模索することもできました。水野さんにも第一声で「本当に映画的ですね」と言っていただきましたよね。

水野
かなり映画化を意識して書かれているんだろうなという感じはしましたね。
清涼院
コズミック・ゼロ』が僕にとって特別な作品だというもう一つの点は、執筆方法がきわめて珍しいスタイルだったことです。僕は編集者から仕事を依頼されると、「わかりました」と言って、次には「はい、できました」と完成した作品を渡すような、いわば「編集者いらず」のタイプだったんです。ところが今回は日本全土を舞台にした作品ですし、途中からどう書けばいいのかわからず途方に暮れてしまって、編集のIさんとAさんに相談しました。そこから、会議室に集まって打ち合わせを重ねることが定例になったんですが、プロの編集者から毎月意見をいただくことはこの作品に限りなくプラスになったんです。作品には主要メンバーが十数人いるのですが、当初の予定では全員が脇役で一場面で死んでいくはずでした。新島という首相秘書官も電話で一度登場するだけのつもりだったのに、Aさんから「新島はもう出ないんですか?」と聞かれて、「そうか、新島を出さなきゃ」と思っているうちに主役級になってしまった。まさに編集者の神の一言で(笑)、そういう忘れられないエピソードがたくさんあるんです。今回、二人の編集者と毎月密な打ち合わせを重ねて作品を作った結果、人と人が協力し合うことで生み出される力はすさまじいものだと実感することができました。まさに「成功のトルネード」です。
水野

ビジネスの世界の言葉で言えば、「ポジティブ・シンキング」であり、もう一つは「マスターマインド」すなわち「利他の精神」ですね。今の流水さんのお話はまさに「周囲への感謝の気持ちをもつ」という利他の精神、成功へとつながるエピソードですね。

清涼院

これまでも編集者には感謝してきたつもりでしたが、今回は本当に合作者になってもらったという印象で、全体の何十パーセントは編集のお二人の発想やアイデアが活かされていますから。ここまで編集者に委ねたのは僕にとっても初めての経験だと思います。

水野

そこでも「生まれ変わっている」感がありますね(笑)。

清涼院

完全に生まれ変わっているんです。昔からの読者の方の中には、どうして流水はこんなに変化したのかと驚く人も多いと思いますよ。