悪の教典 Lesson of evil

貴志祐介

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著者インタビュー

蓮実聖司は矯正可能だったか

●サイコパスは純正のオポチュニスト?

――ラストは皮肉でした。蓮実の言動に翻弄される“善意”の人たちが、同情心で隠蔽されたかつての彼の犯行をまるで彼のトラウマであるかのように読み取ろうとする。トラウマの認定を他者がするむつかしさを感じます。

貴志 あれを皮肉と感じる人は、とてもまともな感性を持っていると思います。でも仮にサイコパスと言われるような人がこの小説を読んだら、蓮実の行動はたぶん当たり前の選択だと考えるはずです。彼らはオポチュニストなわけですから、利用できるものは何でも利用する。蓮実同様、自分だってそうするだろうと考える。むしろそうでなかったら、「なぜその状況を使わないのだろう?」という感想をもつでしょう。

――不屈、といえば、不屈ですね。常に最善の可能性を選びつづける……。

貴志 逆説的な話になりますが、彼らは能力は高いですし、局面によってはめざましく役に立つことがあるかもしれないんです。戦争ばかりしているような時代であれば、彼らのような感性のほうが、情実抜きで将棋でもさしているかのようにパワーの衝突だけを冷静に分析して行動できるはずです。逆に、見込みのない戦争を回避させることもできるかもしれないわけです。それが自分にとって最良だと思えば。だからといって、彼らが世界に必要不可欠な存在であるとか、神の摂理であるとか言うつもりはさらさらないんですけどね。

――犯罪領域に逸脱しなければ、社会に対して有効に機能していくことができるかもしれない、ということでしょうか。

貴志 たとえば、サイコパスとはまったく別種の話なんですが、染色体でXYY型というのがあります。一時、かなり話題になった超男性――染色体のYが一本多くついている男性のことで、彼らはだいたい身長がとても高くて、代謝が高いせいか痩せていて、非常に男性的だといわれてます。知り合いにいるんですけど、普通の男性がオカマに見えるぐらい男性的なんですよ。