居酒屋おくのほそ道:メニュー

太田和彦さん写真

第五回 一関第五回 一関


中尊寺金色堂
 一関には飲み屋通りはなく、町は閑散としている。居酒屋も少ないが、その分「こまつ」「喜の川」はたいへん水準高く満足できる。「こまつ」は、やや町はずれの白壁のきれいな蔵造り。落ち着いた雰囲気と父母・兄・妹の家族の温かさがたいへん居心地良く、団体や会社帰りよりも、この店のファンの女性客が多い。すてきな妹さんは近々嫁に行くので、はやく行かないとお会いできない。産地直送の魚介、野菜は何を頼んでも間違いなく、お父さん自慢の手打ち蕎麦もぜひ。「喜の川」は店も大きく賑やかにやれ、入ってすぐのカウンターで揃いの東北名酒を楽しむのもいい。カウンター上の煮物から好きなお通しを選べ、結構量もある。ご主人もお姉さんも愛想よく、からかいながら飲む酒が楽しい。ベテランの板前さんはちょっと片耳が遠いので注文は大声で、またはご主人へ。
 今回の取材で一関はバーの町と知った。「シュガー・バー」(若いマスターと美人奥様の洗練された居心地)、「シスル」(イギリスを愛するマスターの大人の趣味と音楽)、「アビエント」(前衛的デザインの店内に長瀬智也がいる)の三軒はそれぞれ個性をもち、はしごが楽しい。仕上げはもちろんレコードジャズを聴かせることでは日本一のジャズバー「ベイシー」だ。ここの大音響サウンドにじっくりと身を浸す至福の時。一関は閑散としているが、じつはなかなか奥が深い町だ。(太田和彦)

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