悪の教典 Lesson of evil

貴志祐介

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著者インタビュー

蓮実聖司は矯正可能だったか

●元ロック少年の執筆BGM

――今回作中に、タイトルと犯行に関わってくる二つの楽曲、『三文オペラ』の「モリタート」と、ELPの「悪の教典#9」が登場しますが、「本の話」の方で、モリタートについては伺ったので、こちらではELPについてお話いただきたいのですが、個人的な思い入れのある曲だったのでしょうか。

貴志 私はロック少年だったので、王道はやはりレッド・ツェッペリンなんですね。そのツェッペリンが「メロディー・メーカー」でずっと一位だったのを、初めてブレイクしたのがELPだったんです。それで何だろう、と思って聞いてみて、アルバムの音のクールさにすごい衝撃を受けたんですね、ツェッペリンにもウェットな部分がありますし、ブリティッシュ・ロックにはブルージーな部分があるわけですが、同じイギリス人がやっているのに、ELPはそれを完全に切り落としているんです。ELPはスリーピース・バンドで、キース・エマーソンという人がメインで、シンセサイザーを弾くんですが、この楽器はだいたいもうクールにならざるをえないですね。基本的に音色(おんしょく)がないですから。
 「悪の教典♯9」の、あのクールな余分なものをすっぱり切り落とした感じが、三文オペラとはまた別な部分で、この作品と非常に雰囲気的に合っているんじゃないかなと思っていました。

――ELPで、他にも好きなアルバムはありますか。

貴志 「タルカス」もけっこう好きですね。「展覧会の絵」とか、クラシックのほうに行っているのもあって、それはそれでいいんですが、私が好きなのはその二枚ですかね。

――ELPの話が出てきたときに、この本の装丁をしたデザイナーが「ああ。持ってる、持ってる」となって、「じゃあ、ああいう系統のジャケみたいな装丁にしたほうがいいの?」という会話が先に一瞬あったんですよ。

貴志 ある年代より上のロックファンは皆知ってるし、相当所持率の高い名盤ですからね。そういえば、ELPの「恐怖の頭脳改革」のジャケットもけっこうコワめですよね。
  今回の作品の中にはドリーム・シアターも出てきまして、私の中では青春時代=ロックなんです。もちろん、クラシックに青春をかけるという小説も当然あってよくて、それは違った味わいになると思うんですけど、青春時代の行き場のないエネルギーにふさわしいのは、やはりロックだろうと。自分自身、ほんとに鬱屈してやり場のない不満を抱えていた時期に、ロックは救いになりましたよね。それは何かを代弁してくれるようなものだったですね。
  長いことメタル系なんて聞いてなかったんですけども、久し振りに聞いてみたら、ぐっと進化を遂げていてすごいですね。ロックって、基本的にユニットは一緒だし、昔やったことを繰り返しているだけだろうと思っていたら、そうではないですね。メタルがいろいろ枝分かれして、作中でも登場しましたけど、ブログレッシブ・フォーク・メタルなんて、「何だ、これは」と思って聞いたんですが、確かにプログレッシブだし、フォークっぽいし、メタルなんですよ。で、聞いてみてけっこう好きかもしれない、と思いました。あと今のミュージシャンはテクニックは昔と段違いにうまい。ドリーム・シアターのメンバーなんてみんな音大出てます。