あらすじ

おさかなばなし

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秋も深まった本所で、堀川沿いにある江戸七不思議の一つ「置いてけ堀」から堀の主の声が聞こえたと噂がたつ。「魚を置いて行けと言われた」「子が行方不明になった」「河童と出くわして店の掛け売りの金を持って行かれた」などなど。そんな噂の堀に落ちたのがご存じ色男の八木清十郎。水に濡れ、風邪で伏せった清十郎を見舞う悪友、高橋麻之助と相馬吉五郎。清十郎が何か隠しているのを感じた二人は、再び向かった夜のお堀で身なりのよい商人に出会う。寿ずからの懐妊知らされて喜ぶ麻之助たちは真相にたどりつけるのか。

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お江戸の一番

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近頃江戸で流行るもの『番付』。相撲のみならず『美人』から『温泉』に『酒』まで順位付けされていたが、ある番付が江戸の二人の男を怒らせることになる。かたや花橘連に属する狂歌師にして吉原の楼主、宇利鶴。かたや朱雀連に属する旗本で画家の長谷如亭。双方に関わりを持つ、清十郎と吉五郎に頼まれ、大岡裁きを買って出た麻之助の秘策は、柳茶屋の看板娘、おれんを巻き込んで、江戸一の盛り場、両国橋界隈を大混乱させることに――。

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御身の名は

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“町名主、麻之助様へ”高橋家に突然届けられた差出人不明の手紙。艶っぽい女文字を父宗右衛門や清十郎にからかわれるが、待ち合わせの上野を訪ねるとそこには誰もいない。やがて詫びの手紙が届き、再び待ち合わせ場所を訪ねる麻之助。続くすっぽかしに吉五郎たちは、おなご狸にばかされたのではと軽口を叩くが、そこへ八木家支配町の金のちょろまかし、消えた文の謎などあやしいことが重なって、事件は意外な展開を見せる。

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おとこだて

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両国橋袂の茶屋でのんきに談笑する清十郎と麻之助。その目の前を侍らしき男が走り抜け、貞吉、そして吉五郎がそのあとを追っていった。そこへ逃げたはずの侍が戻ってきて、麻之助の団子をつまみあげると風のように走り去った。その後吉五郎に団子代を請求しにいった麻之助は、武家の妻女をたぶらかして金をとるという事件を書いたよみうりと、その犯人が貞吉たちであるという噂を聞かされる。噂を追ううち、麻之助は夏三郎という部屋住みの三男坊にたどりつく。

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鬼神のお告げ

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富くじ興行でごったがえす湯島天満宮の境内。麻之助と清十郎は駒吉と名乗る男が、自分は三尸(さんし)のお告げで今回の大当たりの札を手に入れたと話しているのを耳にした。三尸とは、庚申の夜に寝ると、その人の身の内から逃げ出るという鬼神で、駒吉はそれを捕まえて、当たり札を聞き出したという。突き止めの当たり札は六百両。人々の興奮が頂点に達した時、駒吉がその札を手にしていた。その後、三尸のお告げは富くじだけではないという噂が広がり、麻之助の身辺にも思いもかけないことが起きる。

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こいわすれ

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身内の不幸に打ちひしがれ、糸の切れた奴凧と呼ばれてるようになった麻之助。清十郎とあてもなく神田川の柳橋あたりを歩いていると、突如麻之助は駈けだし、橋から落ちかけた娘を助けようとしたが、あえなく二人は川へ落ちていった。麻之助が助けようとしたお千夜は名門の料亭、北国屋の一人娘。麻之助ら三人はその接待を受ける。当主、北国屋正兵衛は娘の縁談を破談にした暦の話を始める。江戸では暦屋十一家のみが、幕府より許しを得て暦を売っているはずなのだが――。正兵衛に頼まれた麻之助らは、暦売りを調べ出す。

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こいわすれ 書影