行く春や鳥啼き魚の目は涙
(ゆくはるや とりなき うおのめはなみだ)
月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也。舟の上に生涯をうかべ馬の口とらえて老をむかふる物は、日々旅にして、旅を栖とす。
格調高い名文で、たちまち読むものに旅心を抱かせる「おくのほそ道」。
俳人・松尾芭蕉が、門弟の河合曾良を伴って旅に出たのは、元禄2年(1689年)3月27日(新暦の5月16日)であった。
船を千住で降り、矢立初めとして詠んだのが、この句である。
当時は木造の千住大橋がかかっており、奥州街道の出発地としてにぎわっていたという。
芭蕉は多くの人々に見送られた心境を、人のみならず、鳥や魚までが別れを惜しんでいると描写してみせたのである。
時に芭蕉45歳。50年の人生における最晩年の旅立ちであった。
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千住大橋
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句碑
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松尾芭蕉像
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