閑さや岩にしみ入る蝉の声
(しずけさや いわにしみいる せみのこえ)
読者の皆様、いきなり雪景色の山寺でごめんなさい。
七星、亀次が立石寺(山形市)に辿りついたのは、冬まっただ中。しかし、芭蕉と曽良が訪ねたのは、当然のことながら夏。5月27日(新暦の7月13日)のことだった。
久々の好天に恵まれ、馬に揺られて尾花沢を出たのは午前8時ころ。雨上がりのすっきりした空が広がっていたことだろう。
途中からは徒歩に切り替え、7里の道をへて山寺の麓にある宿へ草鞋をぬいだが、<日いまだ暮れず>で、午後3時にもなっていない。さっそく登ることにした。
芭蕉は山容を<岩に巌(いわお)を重ねて山とし、松柏年旧(ふ)り、土石老いて苔滑(なめらか)>と描写したうえで、崖をめぐり、岩を這って参拝しなければならないほど急峻だと描く。
本来なら峻絶して人を寄せ付けないような場所に、立派な堂宇が立ち並ぶ不思議。しかし、<岩上の院々扉を閉じて、物の音聞こえず>まるで人の気配が消えたかのようだ。眼下にひろがる絶景を見渡せば尚更のこと、一人取り残されたような気持になったのではあるまいか。
さびしさや岩にしみ込蝉の声
『初蝉』などでは、そう記されている。
下の写真は、別の意味で寂しそうでは、ある。
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立石寺本堂
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立石寺 芭蕉(左)・曾良(右)像
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立石寺 芭蕉句碑
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