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用語解説AtoZ

シリーズ最新刊を読む前に

AからZまでおさらいすれば、「ガリレオ」通になれるかも?

text:Hiroko Oya
illustrations:Takashi Koshii

A.アーチェリー[archery]
東野圭吾の原点にして作中の重要な小道具

東野は大学時代アーチェリー部の主将を務めたほどの腕前で、江戸川乱歩賞を受賞したデビュー作『放課後』もアーチェリーが題材の学園もの。作家・東野圭吾の出発点とも言えるアーチェリーは、『予知夢』に収められた短篇で重要な小道具として使われ、懐かしく思った読者も多い。作中には、バドミントンほかスポーツがしばしば登場。

B.ビートルズ[beatles]
あの登場人物が好む洋楽タイトルは……?
「The Long And Winding Road」『Let It Be』ユニバーサルミュージック ¥2,700(税込)
「My Heart Will Go On」『The Best So Far...2018 Tour Edition』 ソニーミュージック ¥2,500(税込)

『聖女の救済』では被害者が好きだったとして、ビートルズの「The Long And Winding Road」が。最新刊の『沈黙のパレード』でも歌手志望の女性がセリーヌ・ディオンの「My Heart Will Go On」を歌うなど洋楽が時折登場する。

C.コーヒー[coffee]
もはやシリーズの定番? 湯川の好むインスタントコーヒー

主人公・湯川のお気に入りはインスタントコーヒー。「どうせインスタントなんだろ」と言う友人の刑事・草薙に、インスタントコーヒーが開発されるまでの試行錯誤の歴史を語り「科学文明の匂いがする」と返す。『聖女の救済』ではバドミントン大会の賞品としてもらったコーヒーメーカーを利用するも、「インスタントコーヒーの味が出せない」のが大きな欠点と語った。『ガリレオの苦悩』の「操縦る」では再びインスタントに。なお、『聖女の救済』は、1杯のコーヒーから事件が始まる。

D.ダウジング[dowsing]
神秘的な力は科学で解き明かせるのか?

棒や振り子の動きで地下水や鉱脈などを探す手法。『ガリレオの苦悩』所収の「指標す」では、中学生の女の子が水晶の振り子を使って事件の手がかりを発見する。果たして振り子のお告げは真実なのか?

E.絵本[ehon]
作中の物語が絵本になった、大人も楽しいサンタの話
『片想い』 東野圭吾 文春文庫 ¥900
『サンタのおばさん』 東野圭吾 作 杉田比呂美 画 文藝春秋 ¥1,333

『聖女の救済』には、てるてる坊主や雪だるまを主人公にした架空の絵本が登場する。実は東野圭吾も絵本の出版経験あり。長篇ミステリ『片想い』でお芝居の台本として名前の出た『サンタのおばさん』を、杉田比呂美の絵とのコラボで絵本として出版したのだ。シニカルでちょっと切ない、大人向けの社会派クリスマス・ストーリーである。

F.フレミングの左手の法則[fleming’s left hand rule]
ドラマでおなじみのあのポーズを逆輸入

ドラマ「ガリレオ」で福山雅治演じる湯川学は、考え込む時に左手の人差し指、中指、親指を伸ばして額と両頬に当てる癖がある。ドラマオリジナルの設定だが、『沈黙のパレード』では小説の湯川学も同じポーズをとり、それを見ていた内海薫刑事が「何かに似ている」「物理で習ったような気がする」とフレミングの左手の法則を連想した。

G.眼鏡[glasses]/H.白衣[hakui]
湯川といえば、のアイテム私服はブランドに身を包む

白衣に眼鏡がトレードマークの湯川だが、プライベートではアルマーニを好む。初登場時の眼鏡は黒縁。そこから『予知夢』で金縁、『容疑者Xの献身』でメタルフレームと併用、『真夏の方程式』で縁なしへと変わって現在に至る。

I.i(虚数)[i]
「ガリレオ」も驚嘆した実行できないトリックの例え

数学で、負の数の平方根として規定された数、つまり現実には実在しない数字のこと。湯川は『聖女の救済』のトリックを虚数に喩え、「トリックは可能だが、実行することは不可能」と驚嘆した。

J.じつに面白い[jitsuniomoshiroi]
原作ではあまり言わない、湯川の決め台詞

事件に興味を示した時の、ドラマの湯川学の決まり文句。「じつに興味深い」と言うこともある。ドラマだけの設定と思われがちだが、実は映像化以前、『予知夢』所収の「絞殺る」にこのセリフが登場する。また、 『沈黙のパレード』でも湯川が「じつに面白い」と口にする場面があるので探してみよう。ただし事件の感想ではない。

K.子ども嫌い[kodomogirai]
じんましんが出るほどの子ども嫌いだがある少年と心通わす

「理論的でない相手と付き合うのは疲れる」ため、湯川は子どもが嫌い。シリーズ第1作の「燃える」では幼い少女に話しかけるのに直接ではなく草薙を介したし、「離脱る」で幽体離脱を体験したという少年と話した際にはじんましんが出ていたほど。そんな彼が、『真夏の方程式』では小学校5年生の「偏屈な子ども」と知り合いになり、勉強を教えたり自由研究を手伝ったりという交流を持つ。物語の最後で湯川が少年に語りかけるシーンは、シリーズ屈指の感動的場面だ。

L.恋[love]
冷静沈着な湯川が動揺した、友人・草薙の恋

『聖女の救済』で草薙が容疑者に恋をしたと聞き、珍しく動揺した湯川だが、彼自身の恋愛はまったく描かれない。若い頃は「早く結婚して後悔している人間と、遅く結婚して後悔している人間では、どちらの方が多いか」と言っていたが、「操縦る」では「結婚して後悔している人間と結婚しないで後悔している人間ではどちらが多いか」に変わっている。

M.マグカップ[mug]
いつも汚れている、ガリレオではお決まりのあれ

研究室で湯川がインスタントコーヒーを飲む時に使うマグカップは何かの景品で、きれいに洗浄されているとは言いがたく、あまりの汚さに初めての来客を驚かせていた。『禁断の魔術』でようやく新しいマグカップをいくつか買ったが、どどめ色のカップだけは誰も使いたがらない。

N.小説 [novel]
読むともっと楽しめる作中に登場する小説たち
『火星年代記〈新版〉』レイ・ブラッドベリ 著 小笠原豊樹 訳 早川書房 ¥987
『ユダの窓』カーター・ディクスン 著 高沢治 訳 創元推理文庫 ¥980

記念すべきシリーズ1作目「燃える」は、レイ・ブラッドベリ『火星年代記』の一節で幕を開ける。また、登場人物がパトリシア・コーンウェルの「検屍官」シリーズを楽しんだという話も。『沈黙のパレード』にはスティーブンスン『宝島』やカーター・ディクスン『ユダの窓』への言及がある。草薙が某有名ミステリを思い出す場面にはニヤリとするかも?

O.オーパス・ワン[opus one]
前作で渡せなかった友人へのプレゼント

カリフォルニアの高級ワイン。『禁断の魔術』の解決後に草薙が湯川に贈るべく用意していたが、湯川が渡米。『沈黙のパレード』で、数年越しにようやく湯川の手に渡った。草薙はこれまでも難事件の度に、「ドン・ペリニヨン」や「久保田萬寿」など高級酒を湯川に進呈している。なお湯川自身は、ワインでは山梨のSADOYAがお気に入りらしい。

P.パレード[parade]
とある町の名物イベントで起きる事件とは?

『沈黙のパレード』の舞台、菊野市で開催される秋祭りのイベントが、キクノ・ストーリー・パレード。チームで有名な物語のコスプレをして名場面を再現するというパレードで、全国から参加者が集まる。この年の見どころは『宝島』だった。湯川も行きつけの食堂の娘と見物に出かけたが、賑やかなパレードの背後で、ある事件が進行していた……。

Q.質問[question]
犯人を質問で追い詰めるのではなく、検証し、答えを出す

名探偵といえば的確な質問で犯人を追い詰める場面を想像するが、実は湯川が犯人に質問する場面は多くない。逆に『容疑者Xの献身』では、湯川が犯人から質問を受けるくだりがある。「自分で考えて答えを出すのと、他人から聞いた答えが正しいのかどうかを確かめるのとでは、どちらが簡単か」──好敵手からの難問に湯川は答えを行動で示す。

R.レールガン[railgun]
後輩との思い出の装置が事件に大きな関わりを持つ

物体を電磁誘導で加速して撃ち出す装置。『禁断の魔術』に登場。湯川の母校、統和高校物理研究会が廃部の危機に瀕し、部員勧誘のデモンストレーションにと、OBの湯川がたったひとりの部員に指導して製作した。これが後に大きな事件へと発展する。なお、統和高校は桜がきれいだが毛虫が多いのが難点。物理研究会顧問のあだ名は“沙悟浄”らしい。

S.佐野史郎[sano shiro]
ドラマのキャストとは違う湯川学の初期イメージ
©bungeishunju

ガリレオシリーズ開始に際し、東野圭吾は湯川のモデルとして俳優の佐野史郎をイメージしていた。映画『夢みるように眠りたい』で彼が演じた探偵が印象に残っていたからだとか。その縁で、文庫版『探偵ガリレオ』には佐野氏が巻末解説を書いている。ただドラマ化以降は、東野も福山雅治のイメージに引きずられてしまったそうだ。

T.帝都大学[teito university]
ドラマ版では一橋大学がロケ地に
©amanaimages

湯川の所属する大学。理工学部物理学科卒の湯川と社会学部卒の草薙はバドミントン部で知り合った同期。バドミントン部のつきあいは長く、「密室る」「偽装う」にも当時の仲間が登場する。他の同期に、『容疑者Xの献身』に登場した数学科出身の石神がいる。帝都大の学生課は厳しいと評判で、履修届のミスなどは訂正させてもらえないらしい。

U.062 内海 薫[utsumi kaoru]
まっすぐに事件を追う刑事。時には湯川の相棒に

草薙の後輩刑事。「落下る」で初登場した。小柄で勝気そうな目。長い髪を後ろでまとめている。観察力に優れ、草薙と意見が対立した時には独断で動くこともある。そのまっすぐな熱心さで、『容疑者Xの献身』以降は警察とは距離を置いていた湯川を引き戻した。ドラマ化に際してテレビ局からの「湯川のパートナーに女性刑事を出したい」という希望を受け、東野圭吾が生み出して先に小説に登場させた。『聖女の救済』ではiPodで福山雅治の歌を聴く場面も。

V.復讐[vengeance]
犯人に悲しい過去や動機があることも

復讐を動機とした物語には『禁断の魔術』や『沈黙のパレード』などがある。犯人の側に同情すべき理由があった時、湯川はどうするのか? 特に『禁断の魔術』で犯人と対峙する終盤の場面は圧巻だ。

W.ウィスキー[whisky]
湯川と草薙が酒を酌み交わすシーンも名物
©bungeishunju

バーで湯川が「アードベッグのソーダ割り」をオーダーする場面が『沈黙のパレード』にある。これまでもハイボールを飲む場面はあったが、銘柄が出たのは初めて。アイラ・モルトと呼ばれるクセの強いウィスキーの中でも、アードベッグは強烈にスモーキーで刺激的。コアなファンの多い銘柄だ。クセの強い湯川にぴったりかも?

X.未知数 X [an unknown X]
まさに未知数、湯川の好敵手が登場する名作

Xは数学で未知数を表す文字。『容疑者Xの献身』では湯川の好敵手として天才数学者が登場するため、この文字が使われたと思われる。作中では「四色問題」や「P≠NP問題」など数学の有名な問題が会話に登場するほか、「微分積分なんて何の役に立つんだ」という高校生の質問に対する教師の答えが素晴らしい。こんなふうに教わりたかった!

Y.063 湯川 学[yukawa manabu]
実は謎多き人物? 優しき物理学者の名探偵

帝都大学理工学部物理学科の准教授として登場、『沈黙のパレード』では教授になった。物理学の専門知識を駆使して難事件を解決し、警視庁からは「ガリレオ」の異名で呼ばれる名探偵。長身で引き締まった体軀のため、年より若く見られる。私生活は一切不明。偏屈なため冷たく見えることもあるが、揺らぎのない優しさの持ち主である。その優しさが描かれた「操縦る」では、恩師から「昔は科学にしか興味がなかった」と言われ、こう返した。「人の心も科学です。とてつもなく奥深い」。

Z.眠り[Zzz...]
あなたの夢にもガリレオが? 夢にかかわるエピソード

運命の人の名前を夢で知る「夢想る」、自殺場面を三日前に夢で見る「予知る」など、『予知夢』には夢にまつわる謎が登場。湯川は「予知夢というのは確率の結果ともいえる」と言い、そのシステムを説く。確率の問題なら今夜、これを読んだあなたの夢に湯川が登場するかも……。

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