


インタビュー

『夜明けのすべて』を読み始める前は、PMSやパニック障害についての知識が自分に不足していたので少し構えていたのですが、読み終えてみると、そういった症状や男女の恋愛の話ではなく、人と人が向き合う話で、自分の視野や心が広がりました。撮影に入る前の準備期間中を含め、何度も読み返しました。読むたびに深まる一方、毎回新鮮な感動もあるのは、瀬尾さんの描く人たちが、私たちに近いリアルな人物だから。撮影中に迷うことがあるときは原作に立ち戻り、原作の藤沢さんに導いてもらったように思います。
瀬尾さんのファンになったのは、読書家の知人から『戸村飯店青春100連発』を渡されたのがきっかけです。瀬尾さんの本は登場人物がみなすごくいい人なんですが、会話が斬新で面白いのと、全体を包む印象は温かいけれど、ところどころ心にグサッと刺さるものがあるのが魅力ですね。
文庫は読者が広がるし、小さいので鞄に入れて持ち歩けるので本好きには嬉しいですよね。最近私は名著と言われるもの、カフカとかチェーホフとかモンゴメリなどを読んでいました。『赤毛のアン』は子供向けのイメージがあるかもしれませんが、実はとても奥深い物語で、大人だからわかる面白さもあり、時を経て読むアンはとてもいいんです。やっぱり時代を越えて読み継がれている本には、現実を忘れ、時間も空間も飛ぶ力があって、すごく面白かったです。
本屋さんにもよく行きます。今まで知らなかったものが目に飛び込んできて魅力的に思えたり、自分の無意識の部分で興味があったものに気づけたりするのがとても楽しくて。本屋さんに行ったら、ぜひ手当たり次第本を手にとって開いてみてほしいです。あらすじなどは皆さん読むと思うんですが、書き出しの何行かを読んだり、ぱっと開いてみたところにある途中の会話文などを読んだりして、面白そうだなと思ったものを買ってみるのがおすすめです。

1998年1月27日、鹿児島県生まれ。
2011年に第7回「東宝シンデレラ」オーディション審査員特別賞を受賞しデビュー。主な出演作に、映画『舞妓はレディ』『君の名は。』、ドラマ『恋はつづくよどこまでも』『カムカムエヴリバディ』、舞台・ミュージカル『組曲虐殺』『千と千尋の神隠し』『ダディ・ロング・レッグズ』『ジェーン・エア』などがある。
2016年からは歌手としても活動し、今年1月には武道館単独ライブを成功させた他、11,12月には毎年少しずつ全国各地を巡る“上白石萌音「yattokosa」Tour2023”を開催。
俳優や歌手として活動する傍ら、エッセイ集『いろいろ』や『翻訳書簡「赤毛のアン」をめぐる言葉の旅』(共著)なども執筆している。