
■あなたの「犬と私の約束」優秀作発表■
グランプリ
先に死なないね。 岩橋美也子(48)
ある日、娘が私に言いました。
「お母さん、お母さんより早く小太郎(犬の名前です)が死ぬのはいいことなんやで」
「何で?悲しいやん?」 私の問いかけに娘は答えてくれました。「小太郎が死んだらお母さんは死んだってわかるやろ? でもお母さんが先に死んだら小太郎、お母さんが死んだってわからないやん。そやから小太郎はずっとお母さんのこと待つやろ? いつ帰って来るんかな、捨てられたんかなって待つやろ? その方がずっと可哀想」 私はなるほどと思いました。辛いけど小太郎の最後を見てあげることが私と犬との約束です。
2位
ずっとそばにいるよ 匿名希望(27)
ぽぽは、元の飼い主であったおばあちゃんと二人で暮らしていたそうです。おばあちゃんが亡くなってしまい、その親戚の方が引き取り手を探してるとのことを聞き、私もポメを亡くしたばかりで、こんな思いを二度としたくないと思っていたところでしたが、ぽぽをひきとることにしました。寂しがりやで一人でいることをとても嫌がるぽぽ。散歩にいくと、通りすがりのおばあちゃんを見つけてはたちどまってみつめています。亡くなったおばあちゃんの姿と重ねているのかと思います。大丈夫だよ。私がそばにいるから。もう淋しい思いはさせないからね。
3位
愛情いっぱい可愛がる 高橋亜矢乃(14)
私もあかりさんと同じで小学校3年生の頃母を亡くしました。小1の時から飼っていたまろんを1年位しか母とは育てられなかったけれど母は愛情いっぱい可愛がろうねと私に言いました。私が母にもっとしてほしかった事を…抱き締めてもらう話し掛けてもらう‥一緒にいてもらう。そんな事を私はまろんにしてあげます。
田中賞
パピのことでお姉ちゃんとケンカをしない 松岡和香奈(10)
私もお姉ちゃんもパピが大好きなので、パピのごはんをあげる時や散歩のリードを持つ時にいつも「私が! 私が!」とけんかになってしまいます。そんな時、パピはいつもおこったような、こまったような顔をして「ワンワン!!」とたくさんほえてしまうので、きっと「ぼくのことでケンカしないで!!」と言っているのだと思います。
川口賞
握手(をしながら話す) 金井美穂(20)
今年4歳になった我が家の犬、華が家に来て間もない頃は私たちに何か要求があっても吠えるばかりだったのですが、父がよく華の手をマッサージするようになってからというもの、訴えたい事があるとまずじーっと見つめ、それでも気付かないと私たちの足や腕にポンと手を乗せてくるようになりました。そうなるとさすがに私も気付いて、こちらからも手を差し伸べて握手をします。手を握りながら「何かして欲しいの?」と話を聞くのが私たちと華との約束になっています。その間だけでも会話をしているようで、とても嬉しくて大切な時間です。
優秀賞
お互いに元気に笑顔でいようね 石原あゆみ(28)
私は12歳で発病、20歳で体調を崩し、元気の無い私の元にゲンはやって来たね。落込んで何も出来なかったけど、ゲンが来て、気付いたら私が元気になってたよ。私が元気になるようにと名づけられたゲンと私は病気と闘ったよ。それから4年後私は結婚が決まり結納から10日後に癌が再発しちゃった…闘病生活、抗がん剤…。でも、今度はフィアンセとゲンを思い出してずっと耐えたよ。
病院の駐車場まで来て応援してくれたゲンちゃん、元気の源をありがとう。あの時ゲンと私は約束したね、今はとっても元気だよ毎日一緒散歩行くのが楽しみだね。
優秀賞
お互い長生きしよう。 横山正弘(61)
ベティ(ウエスティ)に会ったのはペットショップでであった。生後三ケ月過ぎて3割に値引きで売られていた。売残りは処分されると聞く。ゥ分の先行きを知ってか憂い顔。既に3匹の老犬のいる我家、まして私も61才、こいつの一生を看てやれるか、躊躇せざるをえなかった。しかし、一週間後、店にはまだあいつがいた。連れ帰るに迷いはなかった。新家族になってベティはとたんにお転婆に変身。救ってやったと言わない。何故なら、こいつのために私が長生きしようと変身、私の方がベティから生を授かったのだから。
優秀賞
できるだけ笑って下さい。私はそれだけで幸せです 中西香織(15)
去年の5月のことです。私が飼っていた犬がフィラリアになりました。手術を受ければ治ると獣医に言われましたが、体のあちこちが弱くなっていてその手術が受けられませんでした。獣医からは「あと、2、3日の命だろう」と言われました。水はよく飲むけれどご飯は食べられず、時々気持ち悪いのかゲーゲーと吐こうとしていました。段々やせて元気もなくなっていったけれど、私の顔を見る度にシッポを振って「そんな顔しないで笑ってよ」という顔をするので、私はできるだけ笑うように心がけました。そして10日後、この世を去りました。
優秀賞
いつも、となりにいること 柏岡穂南(12)
私は、いつも愛犬「マロン」といっしょにねています。でも事情があって、1日ちがうふとんでねました。次の日おきて、マロンのねていた部屋にいくと、おすわりをしてこっちを見てました。名前を呼ぶと、しっぽをふって私の足もとにきました。そして私がマロンをだきかかえてソファに移動させ、私もとなりにすわると、マロンはスヤスヤとねてしまいました。よくよくお母さんにきくと、「マロン、夜ずっと、涙をながしてたんだよ」…といいました。マロンの目の下には、涙のあとがありました。
優秀賞
私がママになってあげるね! 山崎ゆかり(43)
“何かあったら犬(ケン)に手紙を託そう”
私もそう思っていました。乳がんの術後、精神的に不安定な私の支えはもちろん家族ですが、日中一人になると押し寄せてくる死への恐怖に、何度庭に出てケンを抱きなでたかわかりません。生後1カ月で私の元にやってきた小さな命、寝顔を見ていると時々オッパイをすう口をします。こんなに早くママから離れて……。私があなたのママになってあげるからね。10年生存率75%、ケンより早く死なないようがんばります。
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