INTERVIEW#02
第二営業部田口 大貴
私の入社理由
こういう人たちが、あの本を……
もともと小説が好きで学生時代から本屋に行くのが趣味のようなものだったので、出版社を就職先の一つとして考えるようになったのは自然ななりゆきでした。中でも文藝春秋には、読む前と後で自分が少し変わってしまうような力強い作品が多い印象を持っていました。そんなパワフルな読み物を作り続けている会社で自分は何かができるのだろうか……という不安はありましたが、実際に就活をはじめてみると、説明会や面接では「思ったよりもゆるい雰囲気」と「思った通りの真面目な人柄」を感じることが多かったです。こういう人たちがあの本を作っているんだと妙に納得したことを覚えています。そんな部分に惹かれて最後に文藝春秋を選んだあのときの感覚は間違っていなかったのだなと今、改めて思います。
今の仕事
について


現在までの経歴
- 2020.03月 入社
- 2020.04月 Number Web編集部
- 2021.07月 第二営業部
営業は、出来上がった本を読者にどう届けるのかを考える仕事です。書店に足を運んで展開してほしい本をご紹介したり、POPなどを作って少しでも多くのお客さんの目に留まるように工夫したり、サイン本の作成やイベントを手配したり。本を知ってもらい、少しでもロスなく読者に届けられるように働いています。
現在の仕事のやりがい
営業は人によっていろいろなやり方がある仕事です。書店員さんに会いに行く、と一言で言っても、そこで何を話すか、何を提案するか、そのためにどんな準備をするのかは担当者に任されています。先輩にアドバイスをもらいながら「今日はこの本をご提案しよう」と準備をして書店に向かい「ぜひやりましょう」とお返事をいただいたとき、自分の仕事がきっかけとなって埋もれていた本が動き始めるんだと実感しました。その本がお客さんの目に留まり売れているのを見たときは、「届いた」と嬉しかったです。文春には私にとっても思い入れのある本がたくさんあります。どの本をご紹介するか、その魅力をどう発信すればお客さんに一番伝わるのか、様々なことを考えながら本を読み返すことが一つの楽しみになっています。
これからの目標や夢
営業で経験を積んだあと、誰かが必要としている小説をつくることが目標です。営業ではどんな本が売れているのか、どんな戦略が成功したのか、読者がいま求めているものは何なのか、たくさんの事例と書店の声から学んでいます。いい本であれば必ず売れるというわけではないからこそ、いい本をきちんと届く形で世に送り出すためには何をすればよいのかを考え続けなければいけないと感じています。
以前所属していたNumber Web編集部では、大量のウェブ記事の中から読者の目をひくためにはどんなタイトルをつければいいかを考える日々を送っていました。それは今、どうPOPを作ればお客さんが立ち止まってくれるのかを考えることにつながっています。今、営業で学んでいることがどんな形で自分を助けてくれるかわからないので、出来る限りたくさんの経験をしていきたいと思っています。


出版社の営業の面白さは何ですか?
小さな仕掛けでも、いろんな人に自分のおすすめ本を届けられる可能性があるというのが営業の面白いところだと思います。
私は学生時代、書店でアルバイトをしていたのですが、「何か面白い本はないかな」という気持ちでふらりと書店に来てくださるお客さんはまだたくさんいると感じていました。そんなお客さんに「ここに、あなたのまだ知らない面白い本があります」と強くアピールができれば、自分のおすすめの本をたくさんの方に手に取ってもらえます。心からいいと思える作品に出会えたとき、「この漫画良かったよ」「このドラマすごくいいよ」と友達に布教することがあるという方もいると思いますが、出版社の営業はそれを仕事として色々な人を巻き込みながらできる面白さがあります。
「つくる面白さ」と
「売る・広める面白さ」、
共通点や違いは
ありますか?
つくることは、自分の頭にしかなかったものが形になり広がっていく面白さがあります。企画を出したときの自分が考えていたことが日本中に広がり、いろいろな意見が飛び交っている様子を見て読者から刺激をもらうこともありました。
売ることには、自分がいいと思う読み物を、他の人にもいいと思ってもらえる面白さがあります。それが数字に結びつき大きく育っていくという可能性もあります。
こう考えると「つくる」と「売る」にはそれぞれにまったく違った面白さがあるように思えるかもしれませんが、やはり「面白い」と感じる瞬間はどちらも読者に届いたときです。編集であれ営業であれ、読者に届けたい、読んでもらいたいという気持ちには違いはないのだと思います。


1週間の仕事の時間配分

オフの1日
お酒が苦手なので学生時代の友人とファミレスでおしゃべりをしたり、思い付きで北海道に行ってみたり……。特別なことは何もせず、入社前と変わらないオフを過ごしています。
文藝春秋を一言で表現するなら
サークルの
空気
忘れられない一冊

小川洋子『猫を抱いて象と泳ぐ』
学生時代、友人から借りて読みました。静かな文章でつづられた不思議な魅力のある本でした。ゆっくり丁寧に読み進め、最後はこんなに美しい小説に出会ったことがないと衝撃を受けました。読み終えたとき、学校の窓から見えていた雪景色がなぜかずっと忘れられません。その後二冊購入して、文春のエントリーシートを書いていたときも、今も、ずっと手元に置いてあります。
