INTERVIEW#05 一期一会 映像メディア部白川 遼太郎

私の入社理由

欲張りな私

お盆や正月に祖父母のもとに帰省するたびに、両親が「週刊文春」と「週刊新潮」を買って交互に読んでいた姿が印象に残っていて、上京してからは、毎週「週刊文春」を読むのが私の習慣になりました。就職活動では、地元・仙台の新聞社でインターンに参加したりもしましたが、就職活動中の2011年3月に東日本大震災が発生し、地元の企業は採用どころではありませんでした。テレビ局などでは集団面接が多く、数分で個性を発揮する瞬発力を求められているように感じていましたが、文藝春秋の面接では学生はいつも一人。瞬発力に欠ける私の話を複数の面接官がじっくり聞いてくれました。しかも、文藝春秋はその名の通り、文藝と春秋(=ジャーナリズム)が両輪となっている会社です。ジャーナリズムと文藝、どちらにも興味があるという欲張りな私を受け入れてくれた会社だと感じています。

今の仕事
について

現在までの経歴

  1. 2012.03月 入社
  2. 2012.04月 週刊文春編集部
  3. 2016.07月 映像メディア部
  4. 2017.07月 週刊文春デジタル編集部
  5. 2019.04月 週刊文春編集部
  6. 2021.07月 映像メディア部

文藝春秋から刊行されている作品の映像化、舞台化などを担当しています。書籍だけでなく、映画やドラマ、舞台といったメディアミックスの形で作品の価値を最大化することが役割です。村上春樹さんの『女のいない男たち』を原作とした映画「ドライブ・マイ・カー」では製作委員会に参加し、カンヌで4冠、アカデミー賞の国際長編映画賞の日本代表作品にも選ばれました。2022年には東野圭吾さんのガリレオシリーズ映画最新作「沈黙のパレード」の公開が控えています。また、作家さんの代理人として様々な契約の実務もこなします。配信ビジネスの隆盛で、最近では海外とのやり取りも増えてきました。

STORY 01

現在の仕事のやりがい

映像作品、とくに映画は企画段階から公開まで3年近くかかります。はじまりは数枚の企画書だったものが、脚本ができ、キャスティングが決まって撮影し、2時間の映画となって何十万、何百万人もの人に届く。その大きな流れの中で仕事ができるのが醍醐味です。

2021年に公開された映画「そして、バトンは渡された」では、原作が本屋大賞受賞作だったこともあり、主演の永野芽郁さんに文春文庫のイメージキャラクターを務めていただきました。映画の製作委員会では、日頃は別の分野でビジネスを展開している会社の人たちが集まり、映画の公開初日という「本番」にむけて、様々な宣伝施策の準備を進めていきます。公開日が近づくにつれて醸成される高揚感、一体感というのはなかなか味わえるものではありません。

映画もヒットし、原作の売上にも跳ね返ってくる。そういう誰もがハッピーな結果になったときには素直に嬉しいですし、大きな達成感があります。

STORY 02

これからの目標や夢

尊敬する新聞記者の大先輩が「ジャーナリズムの役割は声なき声をすくいあげること」とおっしゃっていて、学生時代、その言葉に深く感銘を受けました。長く在籍した週刊誌時代は、労働問題や事件を担当することが多かったのですが、この大先輩の言葉を折に触れて意識してきました。取材対象者とは「一期一会」の心構えで向き合ってきましたし、人との出会いを大切にしてきたつもりです。

そして、それは今の仕事でも変わりません。文藝春秋の作品に興味を持ち、企画を提案してくれる方たちとのひとつひとつの出会いを大切にしていきたいと思っています。

その結果として、社会現象になるようなスク―プや大ヒット映画に関わることができたらいいなと思っています。

STORY 03

なぜ文藝春秋は
映像ビジネスを重視して
いるのでしょうか?

出版業界において、映像化などのライツビジネスはおおきな成長分野のひとつです。映像化が書籍の売上にも直結しますし、NetflixやAmazon prime video、ディズニープラスでの配信は、世界規模のビジネスチャンスにもなります。俳優・松尾諭さんの自伝的エッセイ『拾われた男』は、ディズニープラスでの映像化が決まっており、今後どこまで展開していけるのかとても楽しみにしています。また、中国では東野圭吾さんを筆頭に日本の原作が人気で、海を越えて多くの問い合わせがあります。ひとたび契約が成立すれば、そこで動く金額は国内の数倍の規模です。

国内では、自社の作品を原作とした映画へも積極的に出資するようになってきました。映画がヒットすることそのものが会社の利益になるので、製作委員会の一員として、映像メディア部の重要性も増していると思っています。

映像メディア部では、これまで映像化に関連した書籍の宣伝業務も担ってきましたが、今年の機構改変で宣伝業務とは切り離し、よりライツビジネスに注力することになりました。会社全体が収益の多角化を図る中で、映像メディア部も稼ぐ力を磨くことが求められています。

STORY 04

記者、編集者の経験が
生かされている瞬間は
いつですか?

週刊誌記者の経験は刺激的なものも多いですから、話のネタとして面白がっていただくことが多いです。以前、福山雅治さんが主演した「SCOOP!」という映画が公開されたときには、映画会社の方との会食で質問攻めにあいました(笑)。また、劇中に記者が登場する作品では、場面設定や小道具、台詞などでプロデューサーや監督が私の意見を参考にしてくれることもあります。2022年に公開される映画でも、台詞のチェックなどで意見を聞いてくださった監督から「すごく参考になりました」と言われたときには、私も製作現場の一員のように感じられて非常に嬉しかったです。

さらに、海外の配信プラットフォーマーはドキュメンタリーの製作にも熱心で、今後、日本のノンフィクションを題材とした作品も増えてくるはずです。文藝春秋は良質なノンフィクション作品が多いですし、私たちが取材に関わってきた経験も役に立つと感じています。

ON OFF

1週間の仕事の時間配分

オフの1日

週刊誌時代は平日休みだったので、今は週末は子供たちと一緒に公園にいったり、習い事の送迎をしたりと子供中心の生活を送っています。最近、数年ぶりに会社の野球チームにも復帰しました。

文藝春秋を一言で表現するなら

放任主義

忘れられない一冊

西﨑伸彦 『巨人軍「闇」の深層』

プロ中のプロが集う「週刊文春」の中でも、編集部で一目置かれる存在だった西﨑伸彦さんの緻密で膨大な取材が結実した一冊です。球界の盟主でありながら、2015年の野球賭博事件など、スキャンダルも多かった2010年代の巨人軍。「週刊文春」で取り上げた事件などから、その組織の実像に迫っています。ちなみに、私も少しだけ登場しています。

「映像メディア部」で
何を伝える、
なぜ伝えるのか。

映像メディア部の役割は映像で原作の魅力を伝える、そのうえで会社の利益に貢献するということだと思います。映画やドラマはたくさんの人が観てくれますし、書籍ではアプローチできなかった層の方にも作品を認知してもらうチャンスだと捉えています。また、活字以上に国境を越えやすいとも感じています。小説でもノンフィクションでも、映像という新しいコンテンツになることで多くの方に知ってもらい、書籍を手に取ってもらえればとても嬉しいです。

簡単に本が売れる時代ではなくなっているのかもしれません。とはいえ、オリジナルのドラマや映画というのも、決して多くはありません。書籍と映像がそれぞれを補い合う形で、国内だけでなく世界中に原作の魅力を伝播させていく。そんな成功事例がどんどん増えていけばいいなと思っています。