INTERVIEW#07 k後悔ではなく反省する 第二文藝部 加藤 彩子

私の入社理由

「活字好き」の幅の広さを感じた

高校生のときからミステリーが好きで、大学でもミステリーを読むサークルに所属していました。そのサークルのOBに文藝春秋の編集者がいたのが、入社の大きなきっかけになったと思います。編集者と実際に話をすることによって、ぼんやりした憧れだった「出版社」という選択肢が、就職活動のメインになりました。

文芸書を扱っている出版社は何社か受けましたが、文藝春秋は特に入りたかったので、しっかり対策をして受験した記憶があります。その一環で各雑誌に目を通していると、文春の幅の広さを感じましたし、また何より「活字が好き! 読むところをいっぱい作りたい!!!!」という強い意志を感じました。どの雑誌も、全部読もうとするとすごく時間がかかります。

実際に入社してからも、本当に本が好きな人が多い会社だなあ、という印象です。いろんな部署の人から「あの本は面白かった」と声をかけていただきます。

今の仕事
について

現在までの経歴

  1. 2009.03月 入社
  2. 2009.04月 CREA 編集部
  3. 2012.04月 第二文藝部

第二文藝部という部署で、主にエンターテイメントの文芸書を編集しています。「オール讀物」「別冊文藝春秋」など自社雑誌に掲載された作品を一冊にまとめるほか、書き下ろしの作品を担当することもあります。

STORY 01

現在の仕事のやりがい

自分自身、多くの本に出会って、意識や人生が変わってきた自覚があるので、作家の方からいただいた原稿を「単行本」という形で世に送り出すことに大きなやりがいを感じています。どんなデザインにしたら、どんな人に手に取っていただけるか。ターゲットを考えながらデザイナーと相談して装丁を考えたり、プロモーションの戦略を練ったりするのはとても楽しいのですが、同時に、一冊の本の運命を左右する責任も常に感じています。

ぜひ多くの人に読んでもらいたい! と思った本に増刷がかかると達成感がありますし、自分が担当した本の感想はついついサーチしてしまいます。楽しいことばかりではないですが、活字中毒の自分にとっては、楽しいと思えることが大半です。よく言われることではありますが、担当する作家の方が書いた原稿の最初の読者になれるのは、やはり格別の喜びです。

STORY 02

これからの目標

文芸の仕事は本当に好きなのでこれからも続けていきたいと思うのですが、書店に並べるだけで本が売れていた時代はもはや遠くなりつつあります。マーケティングの勉強をもっときちんとして、成果を出したいと思っています。

あとは、出版社主体で本を薦めるサービスをつくれたらいいな、と。

出版業界と関係ない人と話していると、「なにか面白い本を読みたい」と思っている人は、まだたくさんいるのです。でも、多くの人が「自分が何を読んだらいいか」が分からない。新作旧作にこだわらず、そこにスッと本を差し出せるようなサービスをつくりたいのですが、まだぼんやりとした夢の段階です。自分が本を編集している立場だと、とにかく自分が担当した新刊を読んでもらいたいと思ってしまうので……これが良くないとは分かっているのですが……。

STORY 03

やりがいと大変なこと

作家と編集者は、友達でもないけれど単純な仕事相手でもない、すごく複雑な関係です。作家の方によっても求められる関係性が違うので、そこを見誤るとやりとりがぎくしゃくしてしまいます。たとえば原稿をお願いしているときも、締め切りまでに何度もご連絡をしたほうがいい方もいれば、執筆中はひたすら原稿に集中したいという方もいます。自分のやり方を押しつけないようにしつつ、相手にとってストレスのないコミュニケーションができるように心がけています。

仕事をしていていちばんつらい瞬間は、自分が心から面白いと思って刊行した本の売れ行きが芳しくないとき。せっかくうちの会社から出させていただいたのに、と作家の方に対しても申し訳ない気持ちでいっぱいになるので、そういうことがないように仕事をする毎日です。出版社に興味のあるみなさまにおかれましては、ちょっとでも気になった本はぜひ買って読んでいただけますと幸いです。損はさせません!

STORY 04

ワークライフバランス

育児しながら仕事をしている先輩の誰もが言っている「時間がない」を痛感しています。平日は家事育児のかなりの部分を夫に担当してもらっているとはいえ、やはり夜の予定は入れづらく、以前と比べるとフットワークが重くなっています。その分、仕事の効率に気を使うようにはなりましたが、すべてが思うようにいくわけではなく。悩みは絶えませんが、悩んでいる時間が無駄なのでは? という悟りの境地に達しつつあります。

阿部智里さんの<八咫烏>シリーズは、担当になったばかりでまだほとんど何もできていないのですが、2019年5月の第二部始動に向けて精一杯阿部さんのサポートをさせていただければと思っています。周りのみなさんのお力も借りつつ頑張りたいです!

ON OFF

1週間の仕事の時間配分

オフの1日

子連れで友人と会ったりして気分転換しています。子どもをきっかけに、今まで話したことのない業界の人と知り合って、話を聞くことができるようになりました。

文藝春秋を一言で表現するなら

手抜きをしない

忘れられない一冊

阿部和重・伊坂幸太郎
『キャプテンサンダーボルト』

8割ほど原稿が完成した状態で、弊社に持ち込まれた作品です。ビッグネーム2人の共作というだけでも大興奮なのに、その完璧な面白さ!!! 単行本の編集を担当させていただけたのは本当に貴重な経験でした。

「第二文藝部」で
何を伝える、
なぜ伝えるのか。

フィクションの世界に触れることは、すべての人にとって必要なことだと思っています。自分の人生には存在しないものを、効率よく吸収できるからです。それは他者に対する想像力につながりますし、人間関係を円滑にするものでもあります。

また、小説を読んだときに得られる感動は、映画やテレビ番組など他のエンターテイメントから得られるものとは種類が違い、とても個人的なものです。「これは自分のために書かれた小説だ」と思えるものに出会えたときの興奮は、一度経験するとやみつきになります。

自分のペースで読める、何度でも読める。だからこそ、自分で考えて自分なりの答えに行きつくことができる。小説でしかできないことは、今も明確にあると信じています。