無理

奥田英朗

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インタビュー

市井の人を描く

――登場人物の描き方でいうと、いちばん面白く読んだのは、少女を監禁する若者・ノブヒコの妄想でした。

奥田

僕はゲームをやりませんが、ゲームの攻略本なんかを買ってきて読むとおかしいんですよね、その世界観が。こういうのに夢中になる人たちのことってまったくわからないんだけれど、問答無用で断じることをせずに、彼らの言い分を聞くつもりで書きました。でも、それがリアリティを出すっていうことだと思うんですよ。作者がどう思うかっていうのは読者にはどうでもいいことなんですね。なるべく作者は黒子に徹して、登場人物に動いてもらう、語ってもらう。

――人物を書いてるうちに、どんどん面白くなったというようなところはありましたか。

奥田

それはありましたね。元暴走族の加藤裕也という男を書いているうちに、最初の予定になかった展開になっていったんです。こいつらに何をやらせようかと思ったとき、突発的な事件を起こして、で、どうするんだって若者が慌てふためく……。そういう間抜けさみたいなものを描くのが好きなんですね、僕はわりと。殺人ていうのはもちろん陰惨なものだけれど、どっちが善でどっちが悪かって言い切れない部分もある。遠くから見てる人間としては笑うしかないような事件を、わりとフラットに描くのが好きなんです。スーパーヒーローものみたいなのには関心がない。市井の人を描くというのが僕にはいちばん向いてるかなと思いますね。

――今回、書いていて苦労されたところはありましたか。

奥田

難しいということはなかったですね、ストーリーに頼った小説ではないので。ただ書きすぎないようにっていうことにいちばん気をつけました。もう言わずもがなのことを書かないように書かないように、と。結局、読者にゲタを預ける部分がすごく多いんですね、この小説は。

――これからも『無理』のようなタイプの犯罪小説は書いていかれるんですか。

奥田

そうですね。ユーモアものは好きですけれど、やはりシリアスものの長編のほうが達成感が大きいんです(笑)。

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