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社員の本棚

テーマ3 衝撃を受けた本

『大地』 パール・バック著/新居格訳、新潮文庫

中学校の夏休みに課題図書として読んだパール・バックの『大地』。新潮文庫版で4冊でしたが、清朝末期に貧民から成り上がる一族の盛衰がたっぷり描かれており、その生のたくましさ、残酷さ、濃厚な面白さ、全然異なる価値観に圧倒された記憶があります。 C

『大地』

『リーマンショック・コンフィデンシャル』 アンドリュー・ロス・ソーキン著/加賀山卓朗訳、ハヤカワNF文庫

取材力、筆力ともに抜群、かつ関係者の証言も豊富。リーマンショックの裏では、かくも人間くさいドラマがあったとは本当に驚かされる。かつてウォールストリートを闊歩したリーマンCEOが、貧乏くじを引かされ、追い込まれる姿は同情を禁じえない。 A

『リーマンショック・コンフィデンシャル』

『イワン・デニーソヴィチの一日』 ソルジェニーツィン著/木村浩訳、新潮文庫

スターリン時代の強制収容所の一日を克明に描いたソヴィエト・ロシア文学の傑作。無実の罪で投獄された主人公は、劣悪な環境下でも誇り高く生きる。「ラーゲルでくたばっていく奴は、他人の飯の皿をなめる奴、医務室をあてにする奴、それから、仲間を密告しにいく奴だ」という台詞に痺れた。 B

『イワン・デニーソヴィチの一日』

『スローカーブを、もう一球』 山際淳司著、角川文庫

山際淳司氏のエッセイ集の中にNumber創刊号に掲載された「江夏の21球」が収録されています。わずか1イニングの間に江夏投手がどんなことを考えていたのか、それがこんな形で文章になるのかと驚いた記憶があります。もう一作挙げるなら『マネー・ボール』(マイケル・ルイス著、早川書房)。スポーツに科学的、数学的なアプローチを持ち込むと、これまでと違った事実が見えてくると思わせてくれた傑作。 D

『スローカーブを、もう一球』

『蘭学事始』 杉田玄白著/片桐一男全訳注、講談社学術文庫 ほか

「誠に艫舵なき船の大海に乗り出だせしが如く」の一文で、「ターヘルアナトミア」の和訳という難事業に挑む蘭学者の気持ちが伝わります。吉村昭氏の『冬の鷹』を併読すると、杉田玄白と前野良沢の個性もよくわかる。 E

『蘭学事始』

テーマ4 ついジャケ買いしてしまった本

『これからの「正義」の話をしよう』 マイケル・サンデル著/鬼澤忍訳、早川書房

2010年刊、ハーバード大学サンデル教授の超人気講義書籍化。正直なところ本のジャケ買いはしたことがないです。が、この本が店頭に並んでいるのを見た時は、白地に文字だけの表紙が、とても印象深かったので、思わず手にとってしまいました。 D

『これからの「正義」の話をしよう』

『小野寺の弟 小野寺の姉』 西田征史著、リンダブックス(幻冬舎文庫版あり)

北海道のとある書店がドカ積みしていて、表紙とタイトルに惹かれて購入。そこそこの歳でともに独身の姉弟は、一軒家に二人暮らし。姉と弟それぞれの視点から交互に描かれる。互いが互いに思いやり、暖かさに満ち溢れた作品。 A

『小野寺の弟・小野寺の姉』

『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』 石井好子著、暮しの手帖社(河出文庫版あり)

かわいい題字を手掛けたのは、連続テレビ小説「とと姉ちゃん」でおなじみの花森安治。シャンソン歌手の石井好子が、50年代のパリ暮しを綴った、お料理エッセイのさきがけ。行間から、おいしそうな食事の湯気と、異国暮らしの哀愁が漂う。 B

『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』

『Sinan――an architectural genius』

16世紀にオスマン帝国で活躍した天才建築家シナンの作品の写真集。イスタンブールの優雅な書店でこの写真集を見せられた時、美しい本で写真も印刷もすばらしいのですが、本が高額かつ非常に大きく重いのでひるんでいたら、日本人の顧客名簿(弊社著者名がちらほら)を見せられ、安全に送ってやると言われ、ふらふらと買ってしまいました。 C

『Sinan――an architectural genius』

『涼宮ハルヒの憂鬱』 谷川流著、角川スニーカー文庫 『とらドラ!』 竹宮ゆゆこ、電撃文庫

ジャケ買いといえば、ラノベ文化だと思ったので、いろいろ考えて古典的(?)な作品を二つほど。『ハルヒ』はなかなか続編が出ないといつも思います。『とらドラ』は10巻とほどよいくらいで完結したのもよかったなと思っています。 E

『涼宮ハルヒの憂鬱』『とらドラ!』

テーマ5 いつ読んでも笑える本

『ゴジラと日の丸』 片山杜秀著、文藝春秋

政治、歴史、映画、音楽、文学……似非科学にラジオまで、「知の巨人」ならぬ「知の大怪獣」による博覧強記、縦横無尽のこの一冊。カタヤマワールドにどっぷり浸かることになるので読みきるためには「勇気」が必要です。 E

『ゴジラと日の丸』

『藝人春秋』 水道橋博士著、文春文庫

WEB連載、単行本、文庫と何度も読んできた思い入れのある作品。特にテリー伊藤と三又又三のエピソードは読むたび爆笑。運悪く、その章を電車内で読んでしまい窒息しそうになった。一転、稲川淳二の話は涙腺崩壊の可能性があり要注意。 A

『藝人春秋』

『ショージ君の青春記』 東海林さだお著、文春文庫

中学生のみぎりより、「丸かじり」シリーズの大ファン。本作はショージ君が偉大な漫画家になるまでの前日譚で、いじらしく貧乏に耐える姿に心打たれる。大学受験でロシア語専修を選んだのはモテたかったから……など、軽妙な筆致が笑いを誘い、ちょっと泣けた。 B

『ショージ君の青春記』

『やんごとなき読者』 アラン・ベネット著/市川恵里訳、白水社

今までに5冊は買いました。あまりに気に入って、他人にも勧めたくて。エリザベス2世を思わせるイギリスの女王(本嫌い)が、老境にいたって、はじめて読書の愉しみに目覚める物語。文章にウッドハウス的味わいもあり、ぐふぐふ笑っているうちに、もうちょっと読みたいところで終わってしまうのも小粋です。 C

『やんごとなき読者』

『国語入試問題必勝法』 清水義範著、講談社文庫

1987年刊の清水義範氏の代表作。清水氏のパスティーシュはどれもこれも面白く、本書も30年近くたった今でも楽しめます。とはいえ、表題作は適当すぎた自分の大学受験時の発想法と似通っていて、まるで自分のことのようです。 D

『国語入試問題必勝法』