文藝春秋 採用案内2018

プロジェクトストーリー2016 文春のデジタル戦略

文春オンライン

雑誌が、「紙」という形ゆえに読まれなくなるのはもったいない。
質の高いコンテンツを世の中に広めることが、僕らの役目です。

文春オンライン編集長 竹田直弘

―― 2017年1月25日にオープンして2ヵ月が経過しました。手応えはいかがですか。

竹田 紙の雑誌や書籍とは一味違ったスピード感や読者の反応を楽しんでいます。良質のコンテンツを提供することはもちろんですが、ベストのタイミングに提供することができれば、想定以上に読まれるコンテンツになります。たとえば、Twitterでいま話題のことを見て、関連記事の順番を入れ替えてみるだけで、急にPV数が上がったりする。それが面白くて、ついついネットとにらめっこになってしまうんですが、ウェブ業界の先輩に「間違いなく3ヵ月で倒れるよ」と諭されたので(笑)、基本的には平日10時に出社し、18時に退社する、その時間内でできることを目指しています。

―― ウェブというと、昼夜の区別なく働くというイメージがありますが……。

竹田 いやいや、それは無理です(笑)。現在のところ、7時、11時、18時の1日3回、記事をアップしていますが、前日までに原稿を準備して、時間になると自動更新する体制をとっています。

―― 記事は編集部で書いているのですか。

竹田 編集部で書くこともないわけではありませんが、執筆はほぼライターや記者にお願いし、編集者は司令塔として原稿の編集、アップするタイミングの調整を行っています。文春オンラインの読者は30代、40代のビジネスパーソンが中心です。なるべく若い世代のライターに記事を書いてもらい、上から目線と感じられる文章を減らして、ライブ感を大切にしたいという思っています。 ニュース、ビジネス、エンタメ、ライフスタイル、フード情報を中心に、毎日7~10本、月300本の記事をアップ。

―― 具体的にどのような記事が読まれましたか。

竹田 一口に文春オンラインの記事といっても、大きくふたつに分かれます。ひとつは、「週刊文春」や「文藝春秋」、「文學界」「オール讀物」「文藝春秋SPECIAL」といった雑誌に掲載された記事の転載です。もうひとつは、オリジナルの記事です。
 まず前者の雑誌記事の転載では、やはり「週刊文春」の〈スクープ速報〉が常に上位に並びます。また、その他の雑誌記事の読まれ方も興味深いです。たとえば、月刊「文藝春秋」2017年2月号に掲載された小池百合子東京都知事と立花隆さんの対談「都議会自民党への宣戦布告」を短く紹介したところ、これを読んだユーザーの6割が30代男性でした。「文藝春秋」の読者は60代、70代の方が中心ですから、そもそも「文藝春秋」に馴染みのない若い読者に読まれたことになります。
 学生のみなさんにとって「文藝春秋」は、敷居の高い雑誌かもしれませんが、たとえば、「ハゲ座談会」だとか、古くは「天皇陛下大いに笑ふ」だとか、とっつきやすい記事も載っているんです。でも、いざ手に取ろうと思ってもすぐには見つけられない。それがウェブであれば、気軽に読むことができる。雑誌が、紙という形であるがゆえに読まれなくなるというのは、もったいないことだと思うんです。紙の雑誌を目にしない方も、ウェブであれば目に留まる可能性が高まる。その橋渡しが、文春オンラインの大事な役目だと思っています。
 それともうひとつ、ウェブ業界の先輩方に、「自信を持ちなさい」と勇気づけられた文藝春秋の強みがあるんですが、わかりますか?

―― ウェブ業界参入はむしろ後手なのに、どんな強みが……?

竹田 深くて緻密な取材に裏打ちされた記事の信憑性と信頼性。昨年末の医療系サイト「WELQ(ウェルク)」の休止問題によってウェブ記事の信頼性が問われているなかで、文春の手間暇をかけた高品質の記事はほぼ唯一無二だ、と。確かに、「週刊文春」「文藝春秋」をはじめ、どの部署においてもストイックに拘ってきたことだと思います。手前味噌ですが(笑)。

―― その一方で、オリジナル記事は、ロシアの深海魚を紹介したり、「とんかつ2020年問題とは何か」なる記事があったり、さらには、あの池上彰さんに「UFOっていると思いますか?」と聞いてみたり(笑)。

竹田 池上さんの「焼きそばのUFOとは違いますよ」という軽妙な回答もなかなか他では聞けません(笑)。「週刊文春」や「文藝春秋」の深い記事の合間に、電車で一駅分くらいで読めちゃう読み物があっても楽しいと思うんです。たとえば、キヨシマさんの「30オンナの脱力系転職活動記」のなかで、「『退職願』は正月明けに出すのがいいらしい」は反応が良かったですね。新年が始まって、会社を辞めたくなった人がこんなにいるんだと驚くぐらい(笑)。「頑張ろう!」と力の入ったものより、ダメな自分を認めてくれるような記事に共感してくれているみたいです。
 もっとも、文藝春秋の社員って、そういう人間臭いところに興味があって、取材やインタビューや座談会を通じて、相手の面白さや違った一面を見たいんですよね。編集者は司令塔と言いましたが、できるだけ外に出て、オリジナルのインタビューなどもやっていきたいと考えています。 「○○さんに聞いてみた」には、池上さんのほか、鈴木涼美さん、星野概念さん、ほりよりこさん、亀山敬司さん、佐渡島庸平さん、燃え殻さん(Twitter職人)と多彩な回答者が登場中!

コンテンツ力を活かしたビジネスにも挑戦!

―― 「文春オンラインを稼げるサイトにする」と公言されていますが、具体的に教えてください。

竹田 これまでのウェブサイトでは、原則無料のコンテンツ提供によって読者をたくさん集め、広告を見てもらうことで収益を得ていました。話題になる、いわゆる〝バズる〟コンテンツを提供して集客しないといけないので、見出しが大袈裟な割に、中身が薄い記事も混ざって玉石混交になってしまうんですね。 広告収入が基本であることに変わりありませんが、私たちは、文藝春秋のコンテンツ力を活かしたビジネスにも挑戦していきます。
 たとえば、記事の外部配信収入です。Yahoo! ニュースやSmartNewsなどのプラットフォームやキュレーションメディアと呼ばれるサイトに、月額を決めて配信します。現在すでに10社以上と契約をしています。繰り返しになりますが、信頼性のある記事に値段が付くようになったという背景があります。ニコニコ動画と組んでいる「週刊文春デジタル」や、2017年1月から始まった「週刊文春×LINE」などとともに、文藝春秋の記事と様々な他社のサービスを組み合わせて大きく展開していきたいですね。
 そして、文春オンラインでの課金サービスも将来的には検討したい。サイトを面白くすることは当然ながら、記事に相当の自信がないとできませんが、これまでどおり、しっかり取材して、信頼性のある記事を作り、ブランドとしての価値を高めていけば、ビジネスとして成立する可能性は十分にあると思います。

―― 今後の文藝春秋のウェブ展開に乞うご期待ですね。最後に、どのような学生に来てほしいですか。

竹田 編集者の仕事の領域はどんどん広がっています。紙という形に拘らずにコンテンツを作り発信し、かつ広い視野でビジネスになるか否かを判断する。一人何役でもこなすことになります。「紙の雑誌や本しか作りたくない!」という方にはちょっとしんどいかもしれませんが、とにかく面白いことに挑戦したいという柔軟性のある方は大歓迎です。
 現在、文春オンライン編集部は6人の小所帯ですから、とにかく人の助けが欲しい(笑)。新人、ベテランの区別なく、社員350人全員がアイデアをちょっとずつ持ち寄って盛り上げていく〝第二の部署〟になりたい。そんな風通しのよい環境を作っていきたいですね。

文春オンライン編集長竹田直弘

1973年生まれ。99年入社。雑誌営業部、「週刊文春」編集部、「Sports Graphic Number」編集部、「CREA」編集部などを経て、現職。