わたしたちの子育て奮闘記 −パパ・ママ座談会−

他の人の手を借りることも大事

平嶋 ただ、それでも拘束時間が長くなる部署もありますよね。三阪さんは雑誌の編集部だから、生活も不規則ですよね? 徹夜の校了作業から帰宅して、朦朧としながら、息子さんを保育園のバスまで抱っこして行ったと聞きましたが。

三阪 そんな時期もありました(笑)。雑誌編集部だと、急遽出掛けないといけないこともあるし、校了前は会社でほぼ徹夜の作業をせざるをえないから、共働きと言いつつ、育児の負担は妻に偏りがちではあります。できるだけ努力したいとは思うのだけど、現実には限界があって。特に、長男は3歳ぐらいまでよく熱を出す子で、保育園から頻繁に呼び出されたし、そもそも預けられない日も多くて、妻があまりにも出勤できない状況が続いてしまった(※4)。それで、妻の職場から自転車で5分、妻の実家にも車で20分あれば行ける場所に引っ越しました。

中川 育児で戦力になれない分、奥さんのストレス軽減を優先したのね。

三阪 自分の通勤時間は1時間超になってしまったけど(苦笑)。編集の良さは、仕事の進め方をある程度任されていて、自分で優先順位をつけてできることだと思います。たとえば、子どもが急に病気になった日は、午前中はとりあえず僕が家に残って子どもの面倒を見て、昼に早退した妻と入れ替わりで出社して深夜まで働くとか。もちろん、取材があればそんなことはできないけど。

中川 うちの夫も編集者なので、平日は仕事をセーブして定時で帰宅し、その代わり土日に出社したりしています。夫婦が2人とも深夜まで仕事というのはやはり無理。私の方が家にいる時間は少ないので、家事はかなり夫にやってもらっています。
 そして大事だと痛感したのは、夫婦で手に負えなくなったら、抱え込まずに他の人の手を借りること。うちは週2日、シルバー人材センターの方に料理をお願いしています。小料理屋をされていた方なので、すごく美味しくて、子どもたちもよく食べてくれるし、民間の家事代行にお願いするのに比べると、経済的な負担も軽めなんです。

坪田 うちも夫にかなり家事をお任せしてます。私は病児保育や子どもの入院時の付き添いなどで、ファミリーサポートの方にすごくお世話になって来ました。ベビーシッターや病児保育で会社の補助が使える事業者が増えたのも助かっています。

中川 仕事も子育ても家事も、自分がどこまでできるのか、なるべく客観的に把握することが必要ですよね。全部完璧にこなすことなんてできないというのが実感です。

採用担当者から補足

※4 看護休暇
小学校入学前の子どもの病気や怪我の看護のために、1年に最大5日の休暇(無給)が取得できます。

関心や経験が広がる貴重な機会に

――お子さんが生まれてから、仕事の内容や取り組み方で変わったことはありますか。

中川 お迎えというタイムリミットはあるし、子どもにかかる時間があるので、優先順位をつけて効率的に片付けることを意識するようになりましたね。

三阪 土日が休めたとしても、平日ゆっくり相手してやれない子どもと遊んだり、たまった家事を片付けたり。仕事から一度、頭を切り替えられるのはいいリフレッシュになる反面、自分の時間は皆無に等しいから、本を読むのだって、意識して時間を作らないと無理なんですよね。

中川 家庭も仕事も大事にしたいからこそ、時間の使い方を工夫しないとね。

三阪 企画の発想地点も自然と少し変わりますよね。保育園の待機児童問題とか、女性の働き方について、より具体的に、自分の問題として考えざるを得なくなった。多少大袈裟な話をすると、たとえば国の財政問題が話題になっても、子どもたちが就職する頃、結婚する頃の日本はどうなってる? と、イメージがくっきり浮かぶようになった。関心や経験の幅が広がるという意味では、貴重な体験だと思います。

平嶋 昨年刊行された辻村深月さんの『朝が来る』は、不妊治療と養子縁組がテーマで、本屋大賞にノミネートされた話題作です。とくに女性読者からの反響が大きいのですが、男性の私も、とても他人事には感じなくて、のめり込んで読みましたね。書店員さんとも、女性が働きながら子育てをすることの大変さについて実感をもってお話しすることができる。営業という業務系の仕事であっても、仕事の広がりを感じますね。

坪田 私も、子育てを通じて発見したことや悩んでいることが企画に影響していると思います。息子たちは2人ともアレルギーがあるのですが、妊娠中や授乳中に母親が食べたものもアレルギーの一因になると病院で聞いていたんです。でも、偶然見たNHKの番組で、アレルギーの原因になりそうな食品をやたらと排除せずに、早めに経口摂取させた方が実はリスクが下がるし、荒れた皮膚からのアレルゲン侵入のほうが大問題だという研究が紹介されていて、びっくり。これは本にしたい! と思ったのがきっかけで書籍化(『アレルギー医療革命 花粉症も食物アレルギーも治せる時代に!』)が実現しました。

中川 子育てを経験したからこそ力の入った仕事はありますよね。私は、「CREA」の「母になる!」特集を読んでいて、自分が愛用しているベビーカーや抱っこひもの紹介や広告がもっと載っているといいのになあと思っていたんです。自分が読者層であるからこそ提案できるクライアントはたくさんあったので、「CREA」の広告担当になったときに、愛用していた育児グッズのメーカーなどに片っ端から営業しました。ママ友のネットワークをたどって、読者モデルを探したり、イベントを開催したりもできました。

三阪 出版社の社員は、子育てに限らず、どんな興味でも、どんな人間関係でも、思わぬ形で仕事に結びつけられるところが面白いですよね。子育てに時間をとられることで制約が多いのも事実だけど、プラスになっていることもある。

中川 仕事との両立で大変な時期は3歳ぐらいまでだから、それを乗り越えられればなんとかなる。これから入社される方も、不安はあるでしょうが、先輩世代に育児中の編集長や管理職も多い。共働きの子育て社員は今後も増えるだろうから、いろいろと知恵を出し合っていきたいですね。

平嶋 そして、なにより子育ては楽しい。さらに妻への感謝の念が深まって絆が強くなる(笑)。そのことも後輩たちに伝えたいですね。