文藝春秋 採用案内2018

ノンフィクション編集局文春新書部 新卒時は出版社に就職。2012年より現職

研究者の道を諦めての就職は、不安ばかりでした。今は、この仕事に携われて幸せだと感じています。

現在の仕事内容

「賞味期限」との勝負

 いくつかの企画を同時並行で進めていて、毎月1冊、年間で約12点程度の本を担当しています。企画→原稿目通し→原稿完成→印刷所への入稿→ゲラの進行→装丁の打合→校了→見本というのが、本づくりの流れです。ただし、メディアへの売込など、本が出来てからの仕事も大事になります。企画のネタを求めて新聞・雑誌・テレビを見たり、人と会うのは、勤務時間に関係なく行いますが、土日・祝日はほぼ休めます(対談収録や校了作業での出勤もありますが)。
 新書は、通常の書籍以上に機動力が勝負。他方で、雑誌とは違って本になるまでに数カ月を要します。緊急出版でも最低2カ月は必要。その間に「賞味期限」が切れるような企画は通用しません。本が出る数カ月後にどうなっているか? 「先を読む」ことが大事になります。

私のスケジュール

  • 11:00

    出社

    新聞やテレビでニュースをチェックした後に出社。

  • 11:30

    メール対応と事務処理

    出版の元手は、極論すれば、「人間関係」のみ。一日に何度も、メール、電話、手紙、面会などを通じて、著者、訳者、関係者と連絡を取り合う。本の発送や契約書の作成など、本づくりにまつわる事務処理も重要な仕事。

  • 13:00

    初校ゲラの点検

    校閲部による誤字脱字の修正を確認したり、疑問点を整理し、著者にゲラを発送する準備をする。

  • 14:00

    上司と企画の打合

    企画会議は月1回開催。ただし、それとは別に、必要であれば、進行中の企画の報告や企画の方向転換、新規の緊急企画など、常時、上司に相談。

  • 16:00

    オビの打合

    新書は「タイトル」と「オビ」で売行がほぼ決まるので、何度も打合を重ねる。また、米大統領選でのトランプの勝利など、何か大きな事件が起きた時には、新しいオビを急ぎ作成する。

  • 17:00

    対談の収録

    新書はインタビュー、対談、講演を元にしたものも多く、毎月いくつもの取材の予定が入る。

  • 19:00

    対談者との会食

    親睦を深めながら、対談者との対話から対談をまとめる際のヒントも得る。

最も印象深い仕事

『イスラーム国の衝撃』の刊行

 2014年夏から秋にかけて、時折、目にする「イスラーム国」関連の報道に「これはきっと大変なことになる!」と胸騒ぎがしました。単なるテロ集団ではなく、「国家樹立」を宣言し、従来のイスラム過激派とは異なる存在に思えたからです。そこで上司に協力を仰ぎ、「この人しかいない」という著者に執筆依頼をしました。依頼から原稿の完成まで、わずか2、3週間。にもかかわらず、著者からは、新書に収まる分量ながら最高水準の原稿をもらいました。その後も綱渡りの作業で何とか校了し、帯には「黒覆面の処刑人」ジハーディ・ジョンの写真を載せ、2015年1月20日の発売日を迎えました。まさにその当日、「イスラーム国」に囚われた二人の日本人の映像が公開されました。本当に痛ましく、悲しい事件でしたが、政府もメディアも世論も混乱するなかで、本書は、「最も頼りになる一冊」となりました。

志望者のみなさんへ

 文藝春秋には中途入社しました。出版業界で働き始めた最初の5年位は、思うように仕事ができず、「いつまで続けられるのだろう?」と不安ばかりでした。研究者志望を諦めての就職でしたが、「出版社の仕事ならきっと研究と近いだろう」という思い込みはすぐに吹き飛びました。しかし、今は、この仕事に携われて幸せだと感じています。
 編集者に必要なのは、優れた「能力」や「知識」以上に「粘り強さ」かもしれません。まず多忙な著者に執筆してもらうのに「粘り強さ」が必要ですし、一冊の本づくりから新たな出会いが生まれ、また次の仕事につながっていく――そういう積み重ねが意味を持つからです。その点では、編集職も営業職も同じで、「人が好き」という人こそ力を発揮できるのが出版の仕事かもしれません。
 お勧めしたいのは新聞の購読です。企画のヒントとなるニュースだけでなく、さまざまな本の広告が載っていて、出版業界の状況が見えてきます。出版社志望なら新聞を読んでいて絶対に損はないと思います。