文藝春秋 採用案内2018

ノンフィクション編集局ノンフィクション出版部 2007年入社、「諸君!」編集部配属。「週刊文春」「文藝春秋」を経て、2014年より現職

お金になるとか役に立つとか、すぐ結果が出ることが重要じゃない。体験したあらゆることが仕事に活きてきます。

現在の仕事内容

一冊の本をかたちにする楽しさと、責任と

「この人の本を作りたい」と思ってゼロから仕込んだ企画だけでなく、雑誌で一度発表されたものをもとに加筆・取材を加えて書籍にする仕事も多いです。通常は4ヶ月程度あれば、本が出来ます(書き下ろし、緊急出版を除く)。トークショーや取材がなければ、土日はお休み。忙しい時期は入稿前や校了前(ゲラのやり取りなど)、それから発売後(本の売り込み)でしょうか。
 単行本は雑誌に比べて細かな仕事が多いのが特徴です。面白いのは目次や本の構成、フォントや紙の質まで、ほぼすべてに決定権があるということ。ただ、それだけに責任は重大です。本は商品ですので、いくら中身が充実していても、手にとってもらえなければ売り上げにつながりません。売れなければ落ち込みますし、本が出来あがってから誤字脱字を発見し、恥ずかしさで消えたくなることも……。
 しかし、著者やデザイナーと相談しながら、一冊の本がかたちになっていく過程は何よりも楽しい時間です。そうして作った本が賞をとって話題になったり、重版がかかったりすると、この仕事を続けていて良かったなと思えます。

私のスケジュール

  • 11:00

    打ち合わせ

    ジャーナリスト・長田昭二さんと打ち合わせです。数週間前に新潟へご出張いただき、取材をしていただいたので、そのご報告をうかがうと共に、今後の執筆方針について意見を出し合いました。打ち合わせが終わると、着替えて、15時から水戸で行われる授賞式へ向かいます。

  • 15:00

    授賞式

    担当した立花隆さんの『武満徹・音楽創造への旅』(2016年2月刊)が吉田秀和賞を受賞しました。2段組で約800ページもの大著を作るのは大変な仕事でしたが、立花さんの喜んでらっしゃるお顔を見ると、こちらも胸がいっぱい。この本を作る機会に与かれて、本当に幸せだったと思いました。受賞パーティに顔を出したあとは、すぐ東京へ舞い戻り、編集部へ。

  • 19:50

    色校チェック

    ノンフィクション作家の奥野修司さんによる『がん治療革命 「副作用のない抗がん剤」の誕生』の、カバーの色校ができたので、デザイナーとチェック。その後は、ムック「文藝春秋オピニオン 2017年の論点100」で依頼した原稿が届いていたので、目を通し、感想をメールで送信。

  • 21:30

    退社

最も印象深い仕事

「明日から大阪ね」――張り詰めた緊張の数日間

 週刊文春特集班に配属が決まり、最初の仕事が大阪市内で起きた女児虐待死事件でした。「明日から大阪ね」と言われ、とるものもとりあえず飛びだしましたが、発生したばかりでしたので、現場周辺のホテルは報道記者の予約で満室。部屋を確保することの大変さをまず思い知らされました。
 新聞、テレビ、雑誌の記者が一斉に動き出しますので、少しでも多くの証言を得ようと毎分毎秒が他社との競争。先輩からもたらされる新情報をもとに加害者・被害者の家族から、関係者が行きつけのスナックまで駆けずり回りました。息切れしそうなくらい緊張で張り詰めた数日間でした。大した証言も得られず、被害者の親を直撃できず、インターホンの前で逡巡するばかりだったのを思い出すと、今でも胸が締め付けられます。あの日に戻りたいとは決して思いませんが、辛かった思い出は時が経つにつれて美しくなるもので、いまでは取材チームで戦略を練り、報告しあう楽しい場面だけが不思議と印象に残っています。

志望者のみなさんへ

 本は会社に勤めだしてからでも、読もうと思えば、時間を作れると思います。しかし、特別な理由がないかぎり、1ヶ月などまとまった休暇を取るのはほぼ不可能です。海外でなくても、国内でもいいと思いますが、見ず知らずの土地で暮らすなり、長期間滞在するといった体験は、まさに学生時代でなければ出来ないことだと思いますので、旅行嫌いでなければ、実現することをおすすめします。
 また、いまの時代は何でもすぐに結果を出さないと評価されないところがあり、役に立つことばかり求められますが、そういうものは自分のなかに何も残してはくれないと思います。要領よくしようと思わなくていいと思います。無駄なことはひとつとしてなく、体験したあらゆることが、仕事に活きてくるはずです。できれば「役に立たない(お金にならない)こと」「それをやることにどれほどの価値があるのかわからないこと」にこそ積極的になって、残りの学生時代を送っていただくといいのではないか――わたしはそういうひとと一緒に働きたいと思います。