INTERVIEW#09
CREA/CREA WEB 編集部
週刊文春WOMAN編集部
井﨑 彩
とらわれない

私の入社理由

ここならば自然体で働ける!

父親が他社の編集者で、幼い頃から一番身近な職業でした。でも反発もあったので、大学は経済学科に進み、就職に際しては採用活動のスタートが早かった銀行や商社をまず受けて、運よく内定を得ることもできました。でも、「これから一生ムリして気分を200%に高揚させて働くんだろうな」という心境でした。そんな中、ほぼ最後に受けたのが文藝春秋。社屋に入った瞬間、のんびりした空気を感じて「あ、ここならば自然体で働ける!」と。実際、親戚と話すような感覚で面接を受け、入社し、現在に至ります。子供を産み、仕事との両立が大変な時期もありましたが、あのときの確信があるからこそ働き続けられているのだと思います。

今の仕事について

現在までの経歴

  1. 1999.03月 入社
  2. 1999.04月 文藝春秋編集部
  3. 2001.04月 週刊文春編集部
  4. 2003.10月 CREA 編集部
  5. 2006.03月 文藝春秋編集部
  1. 2008.04月 CREA 編集部
  2. 2014.07月 週刊文春編集部
  3. 2016.07月 CREA 編集部
  4. 2018.07月 週刊文春出版部
  5. 2022.07月 CREA/CREA WEB編集部、
    週刊文春WOMAN編集部を兼務

今の仕事について

季刊誌である「週刊文春WOMAN」「CREA」の編集長と、ウェブメディア「CREA WEB」の編集長。取材、記事作成から、広告営業、新聞広告やラジオCMの原稿書きまで、雑誌作りに関わることは何でもやっています。

現在の仕事のやりがい

入社以来、「文藝春秋」 → 「週刊文春」 → 「CREA」 → 「文藝春秋」 → 「CREA」 → 「週刊文春」 → 「CREA」 → 「週刊文春」 → 「CREA」と、性質の異なる雑誌をめまぐるしく異動してきました。

どちらの世界でも中途半端な自分に、長い間コンプレックスがあったように思います。「でも週刊誌にも女性ビジュアル誌にも携わった経験があるからこそ、つくれるものがあるんじゃない?」。そんな自問自答の末、思いついたのが2018年末に創刊した「週刊文春WOMAN」。「こんな女性誌見たことない」「ずっと取っておきたい雑誌」といった感想をいただくと、嬉しいですね。

さらに2022年7月からは、古巣の「CREA」「CREA WEB」の編集長も兼ねるようになりました。女性誌が次々に休刊する時代ですから、舵取りは簡単ではありません。この数年は、出版業界にとって、おそらくグーテンベルクが活版印刷術を発明して以来の大転換期。そんな時代に、紙とウェブあわせて3つのメディアを任せてもらえるのは有り難いこと。肩の荷の重さは気にせず(笑)、日々の試行錯誤を面白がっていきたいなと思ってます。

これからの目標や夢

自分が担当した記事を読み返して、「文藝春秋らしくない記事を作ってしまった」と反省することがあります。判断基準は「人間が描けているか」。硬派のノンフィクションに限りません。イケメンスターのインタビューならば、普段は見えない人間らしい一言や動作を盛り込めているか。健康や美容の記事ならば、人々のほんとうの不調や悩みを拾えているか。人間を描けた記事は、反響も大きいものです。

仕事に行き詰まると、資料室で過去の名記事を読んで「どこが違うんだろう?」と研究します。許されるのであれば、定年までずっと、そうやって「人間を描くこと」を目指していきたいです。

編集者として大事にしていること

39歳のとき、中学生と保育園児の息子を抱えながら、「週刊文春」で事件やスキャンダルを追いかける特集班のデスクをしていました。「この仕事、向いてないなあ」「じゃあ、私に何ができるんだろう」と思い悩む中で、《週刊文春には女性読者が半分近くいるのだから、女性の興味に特化した女性版・週刊文春を時々出してはどうですか?》、そんな企画を会社に出したら通った。運よくパイロット版が完売して、2018年末からは「週刊文春WOMAN」として年3回刊、一年後には年4回刊の季刊誌にすることができました。

週刊文春WOMAN」の編集で心がけているのは、じつは「読者が読みたい記事ばかりにしない」ということです。色んなタイプの編集者がいますが、いま最も評価され、売上にも繋がるのは「私がずっと思っていたことが書かれてました」という共感を読者から集められる人。でも私は、それでいいのかなと思ってしまうんです。AIで最適化された情報ばかり目にする時代だからこそ、「その視点、思ってもみなかった」という驚きを読者にもたらしたいと思っています。

一緒に働きたい人

とらわれない人」「自分の頭で考えられる人」ですね。社内では「昔に比べると……」という言葉をよく聞きます。でも私は、出版不況の時代だからこそ、何でもありで面白いな、と思っています。「紙の編集者/デジタルの編集者」「編集担当/広告担当/営業担当」などの垣根はなくなっていかないといけない。「人間を描く」という文藝春秋イズムは忘れずに、それをどんな場でどんな風に発信していくかを考えていくのが、これからの文藝春秋社員の仕事だろうと思います。

1週間の仕事の時間配分

オフの1日

長男が大学生、次男が中学生になったので、自分のために時間を使えるように。平日に録画したテレビや映画を観たり、本を読んだり気が向いたら家事。月に1、2回はライブや舞台。

文藝春秋を一言で
表現するなら

昭和っぽい

忘れられない一冊

「高校の図書館で読んだ『Number』」

高校時代、Jリーグ発足前のサッカーの追っかけでした(笑)。試合観戦だけでは飽き足らず、練習を見学したり、ユースチームの有望株をチェックしたり。その頃、知ったのが「Number」。選手の人間性に迫った記事が印象的で、出版社をチェックしたら文春でした。

入社を考える方へのメッセージ

「週刊文春WOMAN」
「CREA」と
“私の好奇心”。

日本には「大人の女性が読む雑誌がない」と言われて久しいです。40代以上の雑誌は、《節約主婦》か《ラグジュアリーなマダム》か《いつまでも美しく輝いていたい大人女子》か……。それぞれとてもよく考えて作られていますが、今の女性は生き方が多様化しているから、そんな単純な人物像では括れなかったり、括られたくなかったりするわけです。

だからこそ、いま、女性達が「週刊文春」を買ってくれている(読者の半分が女性)。世の中の、きれいごとでは済まない本質をしっかり見せる。そんな「週刊文春」のテイストを活かしながら、「週刊文春WOMAN」ではより女性に即した話題を取り上げていきます。たとえば、1、2号目で特集して大反響を集めた、更年期以降の膣や泌尿器、肛門のケア。2023年夏号では、男女雇用機会均等法の第一世代が60歳の定年を迎えるので「いつまで働き続けますか?」という特集をしました。

一方、創刊34年を迎える「CREA」は、私自身が入社前、一読者として、女性誌の面白さを学んだ雑誌です。1989年、まだ日本の女性誌のコンセプトが〝異性モテ〟一辺倒だった時代に「美しき野次馬たちへ」をキャッチフレーズに誕生。男女雇用機会均等法が施行され、新しい時代が来るという期待感がありました。創刊号には、日本初のセクシュアルハラスメント裁判の記事が掲載されています。その後、時代ごとに扱う内容は変わっても、女性が生きていくうえで軸になる情報を届ける、という芯の部分は変わっていません。

コロナ禍で社会のありようが変わるなか、雑誌だから伝えられることは何なのか?「女性は普通こうする」「女性誌でこんな話題は扱わない」「こっちのほうが生きやすい」といった固定観念は脇に置き、女性たちの素直な疑問、好奇心、心の内のモヤモヤに応えていく雑誌をつくっていきたいと思います。