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国際局

「事件を起きる前に見通す」 知られざる海外作品をいち早く紹介
文藝春秋BOOKS

担当者が選ぶ2016イチオシ企画

『トランプ』(ワシントン・ポスト取材班、マイケル・クラニッシュ、マーク・フィッシャー著)

「大統領選では誰に投票しますか?」。2016年3月、ニューヨーク。左派系出版社の創業者にこんな質問をしてみると、彼は予想通りバーニー・サンダースの名を挙げた後、「でも」と言葉を続けました。「サンダースはヒラリーに勝てないだろう。だから、本選ではトランプに投票するよ」。それは、「右と左」「共和党と民主党」といったこれまでの政治概念をぶち壊す、トランプ現象の本質に触れた瞬間でした。いま、確実に世界が動いている。そんな確信から、すぐに本書を買い付けました。海外の出版人と言葉を交わしながら、時代の大きなうねりの中に飛び込んでいく。それも翻訳出版の醍醐味です。(担当:T)

志望者のみなさんへ

企画に国境なし

 2016年3月、ニューヨーク。ミッドタウンの寿司屋で米国の大手版元サイモンアンドシュスターの版権担当者ポール・オハンランと寿司をつまんでいた時のことです。そういえば、と言って、ポールが何気なくとりだした一枚の企画書がありました。
 ワシントン・ポストが記者20人を投入して予備選の候補であるトランプの人生を精査する。その20人の中には、1970年代にニクソン大統領を追い落したボブ・ウッドワードの名前もありました。
 しかし、この時トランプはまだいくつかの予備選に勝っただけの段階、7月に予定されている党大会では、共和党主流派の工作で2、3位連合も成立する可能性も充分ありました。しかも、全ての原稿が入るのは共和党大会が終った後の7月30日と企画書にはあります。
 どんなに急いで出しても翻訳の期間があるので10月上旬の刊行になる。大統領選挙の本選は11月8日だから、当選しなければ、刷った本は売れ残る。
 しかし、ここで、私たちは即日前払い金を払い、敢然とこの本の権利をおさえたのです。
 2015年1月にロレッタ・ナポリオーニの『イスラム国』を出したときもそうでしたが、私たちの仕事は事件が起こってから本を出すのではなく、ざわついている分野をさぐり、半年後の情勢の筋読みをしながら、企画を買いつけ出版していくのです。『イスラム国』では、本の出版の2週間後に、「イスラム国」が日本人二人を人質にとり、その身代金を要求するビデオを公表することになりましたが、今回も、トランプは大方の予想を裏切って当選しました。ワシントン・ポスト取材班『トランプ』はすぐに緊急重版がかかりました。

 国際局では、翻訳のノンフィクション、フィクションを中心に、日本のノンフィクションも出版しています。こうした幅広い出版活動を通じて世の中がどのように動くか、肌感覚で感じ取っていくことで、「事件の起こる前に本を出す」ことができます。
 ナポリオーニの本と同時期に出版したのが、大宅賞を受賞することになる毎日新聞科学環境部の須田桃子さんによる『捏造の科学者 STAP細胞事件』でしたが、翌年も堀川惠子さんの『原爆供養塔』で大宅賞を受賞することができました。

 企画に国境はなく、国際局では世界のどこで起こったことでも、重要で面白いことであれば、本にしたいと思っています。幅広い好奇心と、瞬発力そしてリスクをとっていく気概を持つ人を求めます。語学に堪能だとなおいいです。

国際局長
下山 進

  1年目 「Emma」編集部
10年目 第二出版局第二部
20年目 同上第一部特別企画長
2014年から現職