文藝春秋 採用案内2018

文春新書部

いま真に求められる「時代性」と「教養」をコンパクトに凝縮して読者へ届ける
文藝春秋BOOKS

担当者が選ぶ2016イチオシ企画

エマニュエル・トッド/堀茂樹訳『問題は英国ではない、EUなのだ――21世紀の新・国家論』

 フランスの歴史家、エマニュエル・トッドさんの『問題は英国ではない、EUなのだ』。14万部を突破した前作『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』と同様に、仏語原書からの翻訳ではなく、日本語でしか読めない「日本オリジナル版」です。別の新著のプロモーションのため、2016年1月に来日した際に収録したロングインタビューが元になっていて、来日時の講演や雑誌インタビューも収めました。通常の著作より語り下ろしで読みやすく、本書も8万部を突破。そして10月に再来日したトッド氏。その際に次作の「仕込み」もしました。(担当:N)

志望者のみなさんへ

新書の醍醐味

 アメリカ大統領にドナルド・トランプ氏が当選したとのニュースを聞いて、編集部は沸き返りました。なぜか……増刷がかかるからです。『ドナルド・トランプ――劇画化するアメリカと世界の悪夢』(佐藤伸行・著)を出版したのは二〇一六年八月。校了は七月の末ですから、世間は、「今、いくら話題になっても、結局はヒラリーでしょ」という空気でした。そんな中、担当編集者は、「トランプ大統領の可能性は決して低くない。今、出しておけば、彼が当選したときに、ベストセラーになる」と、腹を据えて取り組んでいました。

 彼は、丁半バクチのように、勘だけでトランプに賭けたわけではありません。背景には、国際的人脈がありました。彼は、『中国4・0』の著者、エドワード・ルトワック氏、さらに、『問題は英国ではない、EUなのだ――21世紀の新・国家論』の著者、エマニュエル・トッド氏も担当しています。その二人から、アメリカにおけるトランプ人気とは、単にキャラクターによるものではなく、世界の大きな流れを反映したものであることを聞いていました。グローバリズムによる国家の疲弊は、それを生み出したアメリカにおいてもっとも深刻であると。

 しかし、発売後、時間がたてばたつほどトランプは劣勢になり、売上もなかなか伸びない日々が続きました。増刷なんて、夢のまた夢、という雰囲気は、投票日まで変らなかったのです。ところが……です。初版一万一〇〇〇部だったものが、当選直後に二刷一万部が決定。さらに三刷二万部も追加されました。新しい宣伝広告の文言やデザインも決定し、印刷所の担当者もあわただしく編集部内を動き回ります。

 新書といえば、編集部は図書館のように静かで、編集部員も大学の研究員のように、日々学術書に目を通している――そんなイメージを持っている諸君も多いかと思いますが、文春新書は、そうではありません。日々世界の動きをつかまえようと動き回っているのです。そして、うまく流れに乗れば、その影響は雑誌よりも大きくなります。雑誌はその週、その月に刷った分を売ってしまえばそれで終わりですが、書籍はどんどん増刷して、巨大な部数に至ることがあるのです。結構、ダイナミックな職場、それが文春新書の編集部です。

文春新書部長
吉地 真

  1年目 「週刊文春」編集部
10年目 「諸君!」編集部
20年目 「文藝春秋」編集部
2015年から現職