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──一月刊の『幽霊法廷』で「幽霊シリーズ」がちょうど二十冊目になります。そして、初の長篇です。
赤川 このシリーズで長篇をいつか書きたいと思っていたんです。
──第一作目の『幽霊列車』は一九七六年度の「オール讀物推理小説新人賞」受賞作で、これが赤川さんのデビュー作ですね。
赤川 そうです。当時、編集部から受賞の電話がかかってきて、「えっ」という感じでした。
その頃はあちこちの賞に作品を送っていて、『幽霊列車』のことは特に意識していなかったんですよ。そういう意味で驚きましたね。「本当かな」という気持ちがあって、だから、そのときは両親にも連絡はしなかったんです。
ところが翌日、たしか休みの土曜日、朝早くに、旅行に行っていた会社の同僚から、新聞で受賞を知って、「おめでとう」って電話がかかってきました。旅先の旅館で早く起きて新聞を見たようです。僕も急いでその新聞を買いに行って、そこでようやく受賞を確認しました(笑)。ああ、本当なんだ、と。自分の書いたものが活字になるのかと思うと、とっても不思議でしたね。
──当時は「日本には珍しいユーモア推理小説」と評されましたが……。
赤川 特にそういう意識はしていませんでした。僕自身読んでいたのはシャーロック・ホームズものやアガサ・クリスティの作品などの外国のミステリーが多くて、同時代の日本の推理小説はあまり読んでいなかった。他の人のミステリーがどんなものかは実はよく知らなかったんです。
ですからユーモアというよりも小説として楽しいものにしたいと思っていましたね。
最初に列車から八人の乗客が消えるという謎をつくって書き始め、半分くらい書いて結末をどうしようかと。作品をなんとか投函できたのは消印当日の締め切り日でした。
その頃は勤めながら小説を書いていましたから、朝六時半には起きないと会社に間にあわないので、どうしても書くのは土日が中心で、しっかり推敲する時間もなく、なんとか締め切りに間に合ったという状態でした。
──第一作目がすぐに映像化されました。
名コンビ誕生
赤川 僕が『幽霊列車』を書いたのは二十八歳のときです。受賞の翌年、テレビドラマ化が決まって、撮影現場で監督の岡本喜八さんにご挨拶したんですが、「あんたが書いたの? 若いね」と驚かれてしまいました。
──四十歳の宇野警部と女子大生の永井夕子、テレビドラマでは田中邦衛さんと浅茅陽子さんでしたが、名コンビですね。
赤川 二十代の僕にとっては四十歳の宇野警部というのは、かなりおじさんでした。そして女子大生。年齢の差からくるふたりのやりとりの面白さや、若い女性に振りまわされる中年男のあたふたぶりを出そうと思ったんです。
現在、僕は宇野警部の年齢を通り越してしまいました。僕の息子といってもいいような歳です。今と当時の四十歳は印象がずいぶん違いますよね、今の四十歳は若い。「男やもめ」なんて言い方はなくなってしまいましたし、彼のような存在は今ではもう珍しくないですね。
──ふたりのモデルはいるのでしょうか。
赤川 どちらも僕が頭の中で考え出したものです。女子大生にしても僕のまわりには、親戚なんかを含めても、一人もいませんでしたから。
四十代なかばに大学で教えることになったんですが、教壇に立つなんて初めてで、授業の内容を考えるのが精一杯でした。どの娘がどんな様子だとか気にしている余裕はありません。自分の作品に置き換えて考えたことなんてなかったですね。
──一作目から年を経て創作の上で変わってきたことはありますか。例えば、携帯電話の普及ですとか。
赤川 そうですね。携帯電話の登場は大きかったです。小説の展開が変わってきてしまいますからね。デビュー当時、公衆電話はまだ十円玉でかけていて、テレフォンカードもない時代でした。
電話がかかってきても、受話器を取らないと誰がかけてきたのかがわからない。緊張感がありました。今ではそれが出る前にわかって、嫌だったら出なくていい。
ただ、携帯だけでやりとりしていては小説として絵にならない。やはり登場人物が直接会って会話しないと成り立たないんです。
携帯は仕方ないのですが、ほかは基本的には社会風俗などでも流行を追わないようにしています。
──赤川さんの執筆作法というのでしょうか、創作のスタイルを教えていただけますか。
赤川 作法なんて、そんな大げさなものではないですけれど、夜中に原稿を書いて朝渡すパターンです。旅先でも原稿用紙を持っていって、このスタイルは同じですね。
先日も京都に行って、南座で歌舞伎の顔見世興行を観て、それが夜十時くらいに終わって、それから午前三時まで原稿を書いていました。薄暗いロビーに下りて行って、フロントで原稿をファックスしてもらってから寝ました。
物語の楽しさを伝えたい
赤川 ほとんど毎日、原稿を書いたりゲラのチェックをしてますね。まったく何もしないのは年に数日です。お正月くらいかな。 |
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