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極楽退屈、地獄が大切
筒井さんと横尾さんのつきあいは古い。短篇集『宇宙衛生博覧会』(一九七九)の装丁を横尾さんが手がけたのをはじめ、筒井さんの小説と横尾さんのポスターを組み合わせたコラボレーション『美藝公』(一九八一)もあった。自宅を訪ねたり、個展を見に行ったり、芝居があれば楽屋をのぞくといった間柄。今回、横尾さんが『ヘル』の装丁を手がけられたこともあって、対談をお願いした。
 場所は東京・原宿の筒井邸。横尾さんは初めての訪問である。どっしりした和風の家の引き戸を開けると――。
横尾 すごいねえ。外からは普通の家だけど、中は想像できなかったなあ。床は土間ですか。
筒井 ええ。土に石を混ぜて突き固めております。でも、あんまり洗えない。洗うと石が浮き出してくるので(笑)。
横尾 壁は今どき珍しい藁を練り込んだ漆喰だし、こういう家は何造りって言うんですか?
筒井 庄屋造りというんでしょうね。本当は土間はもっとずっと広くて、そこの奥に牛がいて……(笑)。
横尾 原宿の人通りの多いところから入ると、別世界のように静かですね。玄関の横に立ててあるのは槍ですか?
筒井 ええ、筒井家に代々伝わってるものです。あの二本の槍の中央にあるのは「ちょん掛け」といってね、戦場で馬上の侍のちょんまげを引っかけて落馬させて首を掻っ切る(笑)。どうやら先祖は筒井順慶の家の足軽だったようです。
 こっちの囲炉裏で話しましょうか。
      *
横尾 新作『ヘル』、本当に面白かったですよ。僕は、装丁のときは、本の中身は読まないんです、編集者に話だけ聞いて。内容を読んでしまうと、かえって描きにくくなるんですね。ところがこの本は、読みだしたら止まらなくて、全部読んだら「これも描きたい、あれも描きたい」と欲求がふくらんで、結局大きいキャンバスに描いちゃった。
筒井 素晴らしい絵をありがとうございました。原稿を書いてるときから、「装丁は横尾さんしかない」と思ってたんですよ。
横尾 「ヘル」だから地獄の一種と思っていいんでしょう? 僕は自慢じゃないけど、死後の世界に関する本をかなり読んだ時期があるんですが、この作品を読んで、「筒井さんもずいぶん研究してらっしゃるな」と思いましたね。
 たとえば、死後の世界では、相手もこちらの気持ちも瞬時に伝わるから、隠し事はできない。本心はさらけ出されてしまう。これはその通りなんです。
筒井 そうなんですね。
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