対談:清涼院流水×水野俊哉

 

[ 第3回 ] 小説・ビジネス書・英語本

清涼院
最後に、英語と小説の関係についてもお話ししておきたいと思います。ミステリーを読んでいて、例えば探偵が外国人と話をする場面に、「○○という名探偵は、……と英語で言った」と書かれているんですが、これは絶対おかしい。英語を知っている人間から見ると、こんな文章は英語ではありえないというケースもあって、リアリティが感じられませんでした。僕は自分がリアルと感じられることしか書けないので、『コズミック・ゼロ』では、僕がリアルと感じる英語をかなり使いました。と偉そうに言いましたが、僕自身も英語に目覚めたのは、つい数年前のことなんですが。
水野
流水さんの英語へのはまり方は驚くほどのものです。ビジネス書の世界では英語本というのも人気があるジャンルなんですが、流水さんには英語本の著者としての資格が現時点でも十分にある。でも、本人はまだ満足していないみたいですね(笑)。
清涼院

遅くとも来年にはTOEICで満点をとれそうなので、それから満を持して英語学習本の決定版を出し始めるつもりです。門外漢がその分野の本を出すためには、説得力というか勲章みたいものが必要ですからね。『キャラ教授』を出した時もビジネス書のことをぜんぜん知らない小説界では冷笑されましたが、日本一の成功本読みと言われる水野さんには認めてもらえました。英語本についても背中を押してもらえてうれしいです。
僕は自分の英語力が上がるにつれて、実は村上春樹さんへの評価が劇的に高まりました。彼は最初から英語を徹底的に意識した作家で、文章も非常に英語っぽい日本語で書かれているということが、村上春樹作品を順番に洋書で読み返して非常に実感できましたし、英語を介して作品の深い部分まで理解できるようになったのも収穫でした。

また、英語にはまったおかげで、小説を書く上で肩の力を抜くことができるようになったのも大きいですね。僕は小説に対していつも全力投球で、書きながら鼻血を出すほど力が入りすぎるタイプだったんですが(笑)、最近、いい具合に力が抜けるようになってきた。それは、これまで小説が僕の人生の優先順位の不動の一位だったのが、今は英語学習が逆転して一位になったからなんです。それで初めてのびのびと小説を書くことができるようになったということも、この『コズミック・ゼロ』には非常に効果的に働いたのではないかと思います。
水野
執筆に疲れると英語の勉強をするんでしょ?(笑)
清涼院
今、僕の最大の体力回復法は英語学習ですから。栄養ドリンクを飲むより、英文読んだほうが回復します。
水野

やっぱりちょっとおかしな人だと思いました(笑)。

清涼院

将来的には、小説・ビジネス書・英語本という三本柱を完全に並び立たせる作家になりたいですね。

水野

私も流水さんと同じように、いろんなジャンルで書いていきたいと思っています。一方向だけの読者ではなく、同じ時代、同じ世界で生きている人すべて読者と考えて、ジャンルにとらわれず書きたいものをどんどん書いていきたいです。