対談:清涼院流水×水野俊哉

[ 第1回 ] 理不尽で欺瞞に満ちた世界

清涼院
まず、水野さんと僕の関係を簡単に説明しておきます。僕はビジネス書が大好きで、小説の十倍くらいビジネス書を読んでいて、その体験を活かしたいと思って書いたのが『成功学キャラ教授 4000万円トクする話』(講談社)なんですが、小説のレーベルで出したためビジネス書の読者にほとんど知られていなかったんです。それが、水野さんのデビュー作『成功本50冊「勝ち抜け」案内』(光文社)で取り上げられてから、にわかに知られるようになりまして……。
水野
私が『キャラ教授』に出会ったのは、事業に失敗して三億円の負債を抱えた頃で、暇になったので久々に小説でも読もうかと書店に入って最初に目についたのが『キャラ教授』でした。これが意外にもミステリーではなくいわゆる成功本で、しかもすごく面白かったんですね。その数年後、私自身がビジネス書の紹介本を書くことになり、五十冊を選んだ中に『キャラ教授』も加えたところ、ビジネス書の書評家の方から、「『キャラ教授』だけは知らなかったけど、読んでみたらすごく面白かった」と大反響をいただいて……。
清涼院
僕も水野さんのブログをチェックするようになって、初めてメールをお送りしたのが去年の七月一日。それ以来、毎日メールをやり取りすることになるなんてね(笑)。
水野
流水さんから初めてメールが届いた時は驚きました。
清涼院
それで会ってみたら、初対面なのに異常に盛り上がって、夕方五時から気がついたら翌朝五時まで一緒にいた。
水野
男と女だったら最後はホテルに行っていたというくらいの盛り上がりでしたね(笑)。文芸とビジネス書の世界には大きな断絶があるのですが、どちらも「人間の営み」というテーマは同じだと思いますし、文芸に興味を持たないビジネスマンにもぜひ流水さんの作品を読んでもらいたかった。
清涼院
「世の中をハッピーにしたい」というのが僕の信念なんですが、水野さんも同じことを考えていて、二人で文芸とビジネス書の垣根を取っ払って、最終的には世の中をハッピーにしたいと考えた企画が、今秋「水野流水」名義での成功本の決定版として実現することになりました。そして、この一連の流れの中で、新作『コズミック・ゼロ』が生まれたということにも、大きな意味があると僕は思っているんです。
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清涼院
今回、『コズミック・ゼロ』を書くことになったきっかけは、初代の担当であるIさんの情熱と、当初の刊行予定(昨年の九月)が僕のデビュー十二周年というタイミングで、干支が一巡するんだったらもう一度原点に戻ってもいいんじゃないかと考えたからです。僕の中の「コズミック」的なものをすべてリセットするという意味も込めて、『コズミック・ゼロ』というタイトルにしました。 僕がデビューした時は、こんな奴は長続きしない、一、二年で消えると散々言われたんです。それで、とにかく「たくさん書く」ことと「書き続ける」という目標を自分に課して、実際、十三年間で六十冊ぐらい出しましたし、二年前には十二カ月連続刊行ということもやりました。
水野
一年間、仮眠しかしなかったと言ってましたね(笑)。
清涼院
それで、もう量はいいかなと考えていたタイミングで『コズミック・ゼロ』を書くことになったので、僕の再出発として徹底的に質にこだわって書いてみようと思ったんです。これはまさに、ビジネス書でよく言われる「量質転換」にあたることで、質を高めるためには千本ノックのように量を経験しなければいけないということです。ところで、今年からは水野さんがまさに量産態勢で、今年と来年で本を二十四冊出す予定だとか。