居酒屋おくのほそ道:メニュー

太田和彦さん写真

第八回 秋田第八回 秋田

 「おらが秋田は美人の出どこ お米にお酒 秋田杉」は全くその通りで、町を歩けば美人とすれ違い、酒は高知あたりと常に日本酒消費量一、二位を争う酒飲み県。飲み方はずばり「だらだらと長い」。市内旭川沿いの川反通りは東北一の繁華街といわれ、古い料亭、居酒屋、バーが並ぶ。学会や医師会、スポーツ団体などの全国集会の誘致も盛んで、皆さん秋田でやりたがるようですナ。
 いろんな名酒とともに、郷土色ゆたかな料理も魅力だ。秋田は一年中、一人前の小鍋立てを楽しみ、海山の具の取り合わせを工夫する。鍋はおおまかに二種あり、一つは「しょっつる(魚醤)で海のもの(はたはた、ホタテ、ニシンなど)を煮る。あと一つは比内鶏の出汁で山のもの(比内地鶏、せり、きのこなど)を煮る。これにきりたんぽを入れるときりたんぽ鍋になる。どちらも寒い冬、夏でも涼しい日のある東北の、簡便で気持も温かくなるすぐれた郷土料理だ。また酒に欠かせないのは「がっこ(漬物)」で、たくあん漬の燻製「いぶりがっこ」は有名だ。それらは秋田随一の居酒屋「酒盃」で存分に味わえる。
 一方秋田は、日本有数のバーの町だ。一番古い「レディ」が重鎮、名バーテンダーだった故・黒坂明さんの残した「クロ&フレンディ」「1980」「1996」の三軒。「コルク・ラウンジ」「アマレット」「グラスホッパー」などに、銀座の名バー「ル・ヴェール」のオーナーバーテンダー佐藤謙一さんが秋田に帰り、8月11日に川反通りの真ん中に「秋田ル・ヴェール」をオープンする。
 地酒と郷土料理、そしてバーと、秋田ほど旅情を楽しめるところはない。しかも美人もいる(くどいですが)。

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