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芭蕉名句選

宇都宮

あらたふと青葉若葉の日の光

(あらとうと      あおばわかばの   ひのひかり)

千住大橋から日光までは、今なら電車を乗り継いで約2時間。
江戸を発った芭蕉と曾良は、粕壁(埼玉県春日部市)、間々田(栃木県小山市)、鹿沼(栃木県鹿沼市)に宿をとり、4日がかりで日光に至った。
そのころの東照宮は、誰もが気軽に参拝できるものでは無かったようだ。曾良の日記によれば、浅草の清水(せいすい)寺から預かった手紙を所縁のある塔頭に届け、社務所への取り次ぎを頼んだようである。
芭蕉らが参拝したのは旧暦4月1日(新暦5月20日)の午後2時から3時頃。前夜から降り続いていた小雨も昼過ぎにはあがっていた。
文字通り滴り落ちるような新緑のなかで、絢爛豪華な社殿のきらめきを拝したことだろう。
「今此御光一天にかゝやきて、恩沢八荒にあふれ、四民安堵の栖穏也。憚り多くて、筆をさし置きぬ」(威光は天に輝き、その恵みは世の隅々まで行きわたって、民の暮らしは平穏である。なお書きつくせない思いはあるが、恐れ多いことであるから筆をとどめる)と、記している。