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臨時増刊
文藝春秋 Gold Version 成功の極意
2005年5月臨時増刊号
3月23日発売 / 定価600円(本体571円)
編集長から
 平成不況の中、通勤途上の電車の中で、数字が並ぷビジネス書や横文字がとびかう実用書を読みふけるサラリーマンをよく見かけます。
 本当にご苦労さまです。
 しかし、仕事というものは、数字や定式で計れるものなのでしょうか。
 三年前、文藝春秋八十周年記念号に匿名希望のサラリーマン読者から、こんな手紙が寄せられました。
〈小生、団塊52歳。リストラ失業を経て本年再就職。本日初給料。通勤駅売店にて初めて文藝春秋を購入する。25年前に死んだ父の世界が息づいていた。しかし、この雑誌、この四半世紀をどう生き延びてきたのだろう? 果たして娘たちは25年後、この雑誌を手にとることがあるのだろうか。〉
 私たち、文藝春秋の編集者にとって、これほど勇気づけられ、考えさせられ、編集に携わる喜びを感じさせていただいたお手紙はありませんでした。
 四半世紀、いや八十年を生き延びた「文藝春秋」には数多くの経営者や人生の達人が登場し、その極意を語っていただきました。その中には一週間以上密着して聞いた本音もあれば、どん底の時期に絞り出した宣言もあります。
 そして、そこには数字だけではない、鮮やかな「人生観」。ほとばしる「情熱」そして心癒される「気配り」が散りばめられています。
 例えば、経営の神様・松下幸之助氏には何度もご登場いただきました。経営論だけではなく、司馬遼太郎・松本清張といった作家と文化や社会を論じていただいています。
 その中に、「成功は、そうなるようになっとんやろ」という名セリフがありました。
 経営の神様でも、思いもよらぬ失敗もある。失敗したと思うことでも、あとでうまくゆくことがある。要は受け止め方だ、という意味でしょうか。
 今日、私たちは、何かを見失って数字という「結果」だけを追いすぎてはいないでしょうか。
 今回、特集で、ソニーの盛田昭夫さんをとりあげたのは、おめにかかった時の第一印象が忘れられないからです。インタビューにあらわれた盛田さんは、「五分待ってください」とおっしやって、電話をはじめました。
 社内の工場長らしい相手との会話が聞こえてきます。「今日、東欧からの交響楽団一行に会いました。その中で一人、片方の耳が不自由で、ウォークマンが使えない人がいた。明後日の帰国の前に、耳が片方不自由でも使えるウォークマンをなんとか作って差し上げたい」。えんえん技術者と改造方法を話しています。
 待たされた時間は五分以上ですが、とても楽しそうで、私は、一遍に盛田さんが好きになりました。
 仕事は愉しく。人間への限りない好奇心と愛情を持っていれば、仕事も職場も人生も愉しいものになる。
 それが表紙にとりあげた司馬さんの言葉・「人たらし」の真意だと思います。
 25年後にも皆さんに手にとってもらえるよう、ふだんの文藝春秋の「意匠」を変えて、創刊八十年の日本人の「知恵」をお届けします。「文藝春秋の世界」へようこそ。
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